寒い。うっかりしていた。
夕方は急激に冷え込みますとお天気お姉さんは言っていたのに、俺はどうしてスルーしたのか。
「あ、あの」
「ん?」
声がして振り返る。
……彼女が、いる。クラスの中ではすごく大人しいのに、気配りが出来て優しい、彼女。
「……その、寒そうだから、これ……」
手渡されたのは白の可愛い手袋。モコモコしていて、いかにも暖かい感じがする。
「じ、じゃあ」
「あ、ちょっ……、」
走り去る彼女に、呆然とする。これないとあんたが寒いんじゃないか?
でも、返すのは何となくなぁ、と思う自分。
駄目だな。
完璧にオレ、あんたに惚れてるッス。