clap log | ナノ




 夏祭りは大賑わいで、人の数ははかり知れず。老若男女入り混じったその中でただただ私は立ち尽くすばかり。
 一緒に来て歩いていたはずのスコールと、はぐれてしまったのだ。

 彼は元々口数が少ないから話すこともあまりなく、私が勝手に出店に並ぶ食べ物などを見ているうちに人の波の中で彼を見失った。



 どうしよう、怖い。



 この人の多い中で、一人。心細いことこの上ない。
 涙が出てきそうになったとき、背後から伸びてきた腕が私を捕らえる。恐怖感に震えればすかさず耳に届く、「俺だ」と言う低い声。



「すまない、見失った」

「いいよ、見つけてくれたもん」

「……次からは、こうしよう」



 私を放した彼が次にした行動に、心臓がドンと拍を打った。
 繋がれた手。絡められた指。
 ゆっくりと顔を上げて彼を見ると、まるで出店でみた林檎飴のように真っ赤な顔が見えた。







(〜2012.12/3拍手お礼文)




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