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奴とお前と、ときどき俺と
「いつまでそうしているつもりだ?」
文次郎が自室で授業の復習をしていると同室者の仙蔵が突然問いただした。
「なんのことだ?」と問い返すと「小平太のことだ」と呆れ顔で言われた。
相変わらず小平太は長次の死を理解していない。
最初は現実を認めたくなくて無理やり『今までの自分』を演じているのだと思っていた。
だが、その考え自体が違っていた。
小平太は長次の『死』そのものを理解していない。
体育委員会の活動時間が大幅に減ったと噂に聞いた。
校外授業の下見や体育倉庫内の設備、運搬等、本来の体育委員の仕事を終わらせるとそそくさと解散してしまうらしい。
逆に困り果てた後輩がバレーや塹壕やマラソン等、小平太に勧めるのだが軟く拒否されたんだとか。
ならばと忍術の苦手分野を相談したら「私よりも長次に聞いたほうが分かりやすいぞ」とこれまた交わされてしまったらしい。
その分、図書室にいる時間が増えたそうだ。
一日に何度も赴いては後輩に「長次はいないのか?」と聞き、適当に本を取ってはパラパラと頁をめくったり、窓から正門を眺めたりして時間をつぶすのだ。
飯を食いっぱぐれることも何度かあった。
問えば、長次と飯を食おうと待っていたら飯の時間に間に合わなくなったそうだ。
それには俺も呆れて、以降食事には必ず小平太を誘うようにしている。
これではまるで、いつまでも帰らない主人を待つ忠犬みたいじゃないか。
――お前は忍びを志した立派な人間だろ?
どんなに待っても帰ってきやしない人間をいつまで待ってるつもりだ?
――もっと周りを見てみろ
あいつよりも、俺の方がお前を見ているのに、どうして気付かないんだ…。
早く現実を受け入れろ。
―――早く俺に気付けよっ!!
「お前も相当悩んでいるようだな、文次郎」
つい思考が顔に出てしまっていたらしい。
仙蔵は窺うような瞳で、試すような瞳で文次郎を見つめる。
「仙蔵…てめぇ何が言いたい?」
「いや別に。他人の忠犬に好かれるのは至難の業だと思ってな」
「あいつは忠犬なんかじゃねぇっ!俺たちと同じ、忍びを志した立派な人間だっ。大体あいつには獣耳も尻尾も付いてないじゃねぇか!!」
「誰が外見のことを言った?」
「あぁ??」
「あいつはシノビであってシノビでない。人間であって人間でない。犬がどんなに願っても狼にはなれんのだよ」
「どういう意味だ…」
「忍びと偲びは全く違うのだぞ」
そう言うと仙蔵は足音を立てず、早々と部屋を出ていってしまった。
文次郎は閉まった扉を暫く眺めることしか出来なかった。
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まさかの萌えない展開orz
なんかもう誰得??って感じのめんめんストーリーでサーセンです…。