RKRN小説/長編 | ナノ
作品


 真夜中の今後会議

「という訳なんだ」

文次郎の話に誰もが静かに耳を傾けた。

殆どの生徒がまだ寝静まる真夜中。
六年い組長屋には文次郎、仙蔵、伊作、留三郎が集合していた。

小平太は自室で眠っている。というよりは伊作が睡眠薬を投与して無理に眠らせた。
これから始める会議に小平太を参加させる訳にはいかなかったからだ。



「俺はなにも出来なかった…」

「お前だけのせいじゃねぇよ。俺達も一緒に探してやるべきだったんだ」

悔やんで自分を責めている文次郎に対し、珍しく留三郎が慰める。
暗闇でも分かるほど外の天気が優れないのは、二人の珍しい行いのせいなのか…此処に集う四人の心情の表れなのか。

「僕らは忍者でもあって人間でもあるんだ。忍務を遂行した留三郎も仲間を助けに行った文次郎も悪くない。誰も悪くなかったんだよ」

「どちらも正心には違いないのだろう?」

伊作も仙蔵も少し項垂れたように呟く。

みんな自分を責めていた。
大切な仲間を自分の不甲斐なさで失ってしまったのだ。
自分がその時駆けつけていれば、もしくは他の対策を立てていれば長次は助かっていたかもしれない。
今更悔やんでも遅いのは重々承知だが、過ぎる後悔に全員が苦虫を噛んだ。

「大変なのはこれから、だろうな」

ふいに仙蔵が呟く。

「これからって…小平太のことか?」

「小平太にとって長次は精神安定剤のようなものだ。人間は自分を見失った時がいちばん恐ろしいからな」

「……犬が狼になるとでも言うのかよ?」

留三郎が少し呆れた声で問う。

「まさか。犬が牙を向くのなら思う存分私の体をくれてやるさ。皮膚や肉や骨をかみ砕いて満足するなら、安いものだろ」

「仙蔵が言いたいのは、自分を自分として見れなくなることなんだよ。感情が無くなっちゃうんだよ」


みんな心当たりがあるのか静かな空気が流れた。
暫くしてその空気を破ったのは文次郎だった。

「長次のやろう、最期に俺に小平太を任せやがった」

「お前、小平太のことが好きだったものな」

仙蔵が文次郎をからかったが、文次郎は冗談だと受け止められずについ怒鳴ってしまった。

「バカタレ!!俺は長次と勝負して小平太を手に入れたかったんだ!!それなのに…死ぬから譲るとかふざけんじゃねえ!!男なら正々堂々と勝負しやがれ」

「…文次郎。それは長次の『遺言』だ。残念だが私たちにはどうすることも出来ない。お前にしか出来ない使命なんだ」

「でも悩みがあったら遠慮しないで言ってね。小平太を幸せに出来るのは文次郎だけだけど、助言くらいなら僕達も協力したいから」

柄にもなく皆が文次郎を見て微笑む。
こういう時、本当の仲間の優しさに安堵してしまう自分がいる。

純粋に嬉しいのが照れくさくて素っ気なく『ありがとな』と呟いた。




――大切な人を突然失ったとき、俺は一体どうするのだろうか――?



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