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頂き物小説


 藤の香、嵐
こちらの小説は蔡牙サマのサイト『臥し待ちの月』で連載中の話、
「現パロ長こへ番外編。六年総出演」になっております。

先に蔡牙サマのサイトからご覧になる事をオススメします。
現パロ・転生・タイムスリップと管理人の萌え要素を存分に含んだ素敵小説なので激しくオススメします〜。

では、どォーぞ★



待ち合わせの場所に着くと、そこには木陰で本を読む長次の姿しかなかった。

(あ?時間、間違えたか?)

だが、待ち合わせ時間に忠実な長次がいるのだ。
間違ってはいない筈。
そう考えを巡らせながら歩みを進める文次郎に長次が気付いた。

「よう」
「……」

軽く手を挙げてあいさつをするが返ってくるのは微かな頷きのみ。
いつもの事なので今更気にも止めずに文次郎は長次のすぐ傍で足を止める。

「他の奴らはまだなのか?」
「…仙蔵は、少し遅れると言っていた」
「伊作達は?」
「…わからん」
「じゃあ、またどっかで不運に巻き込まれてんのかもな」

伊作の不運に留三郎が巻き込まれる、それもよくあること。
だからそれらは納得がいく。
しかし。

「肝心のあいつは?」

ここにいるべき筈の人物が。
自分達が集まる原因の姿が、ここにない。

「……」
「あ?」

いつも以上に小さな声に、文次郎は座ったままの長次を見下ろす形で見つめる。
だが長次の視線は文次郎ではなく、その頭上に広がる木の枝へと向けられていた。

「…まさか!」

背筋を走る嫌な予感と、頭上の木の葉がざわめく音。
そして先程よりも少し大きな声量の長次の声。

「…もう、待ちわびてる」

それらからほんの数瞬後には文次郎の肩へとその人物は舞い降りた。

「いっけいけどんどーんっ!!」

いつもの喧しい程の掛け声と共に。


「なんだー、文次郎。だらしないぞ?」

此れぐらいで潰れるなんて情けない!
からりと笑いながら言う小平太の下敷きになったまま、文次郎は震えていた。
勿論恐怖からではなく、怒りから。

「…こぉへいたぁーっ!!」
「おお!?」

ガバリ!!

上に小平太を乗せたまま地に伏せていた文次郎が勢い良く起き上がる。
その反動で転がり落ちた小平太を、般若の形相で見つめる文次郎。
その姿に素早く体勢を立て直す。
何時でも駆け出せるように。
一般人が見たら気を失うであろう文次郎の姿にも臆する事無く、寧ろ今から始まる出来事に小平太は瞳を輝かせていた。

「何度言やぁ、お前はいきなり飛びかからなくなるんだぁーっ!!!」
「あははは!もんじが怒ったー!」
「待ちやがれっ!!」

叫びと共に小平太を捕えようとした文次郎の手は空を切る。
既に動きを読んで駆け出した小平太を追うように、文次郎も猛然と駆け出す。
長次はそのいつの間にやら身慣れてしまった風景を少し遠巻きに見つめていた。

「あははは!どうしたもんじ!そんなんじゃ捕まらんぞ!」
「こ、っのやろっ!!」

公園の中を所狭しと駆け回る小平太の、ふわふわと揺れる紺色の髪。
楽しそうに輝く笑顔。
見ていて暖かな心持ちになる風景だと思う。

(見るだけならな!)

実際、この男が起こす嵐の被害はただ事ではない。
しかもそれらのほとんどが文次郎に向うのだ。
つまるところ。

「今度こそ勘弁ならん!!」
「おぉ!?」

叫びと共に一気に文次郎が加速する。
今一歩でその濃紺の髪に手が届くというところで。

「なにぃ!?」

ガシィッ!!

寸での所で眼前で組んだ両腕で防ぐが、その衝撃で痺れが走るそれに苛立ちを覚える。
小平太を追う事に夢中になりすぎて何時の間にか己へと拳を震う留三郎に気付けなかったことに。

「…なんのつもりだ、てめぇ」
「小平太苛めてんじゃねぇよ」

留三郎の一言に文次郎の怒りは振り切れた。

「苛められてんのはこっちだ!!知らねえくせに口出すな!」
「お前が苛められるキャラか!知らない場合はお前が悪い!!」
「どんな理屈だそりゃあ!」
「仙蔵が言ってたんだよ!!」

「…一体、留に何吹き込んだのさ」
「なぁに。留三郎の可愛い小平太についてちょっとな」

いつの間にやら文次郎と留三郎の戦いへと展望したそれを伊作と仙蔵が傍観していた。
公園についた途端、目に入ってきた光景に血相を変えて留三郎が駆け出したのには流石の伊作も驚いたが。

(仙蔵が裏で糸を引いてるなら分かる気がする…)

些か双方に温度差はあったものの楽し気な追いかけっことも取れる風景が、一体友人の目にはどう映ったのか。
深く考えるとあまりに友人が不憫に思えるため伊作は考えを放棄する。
その変わり。

「ところで仙蔵」
「なんだ?」
「その手は何?」

伊作の視線の先では。

「仙ちゃーん。私ももんじ達と遊びたいよー」
「はっはっはっ。もう少しここで待っていろ。ほら、菓子をやるから」
「わぁ〜い!仙ちゃんありがとー!!」

もふもふもふ。

話す際中も仙蔵の手は止まる事無く小平太の髪を弄び続ける。
お菓子に釣られた小平太はそれを気にする様子も無い。

「仙蔵…」
「なに。小平太の髪は触り心地が良いからな」

つい触りたくなる。
そう言いながら、やはり手は止まる事は無い。

「…まぁ、分からなくないけどね」
「いさっくんも食べる?」
「はっはっはっ。小平太は可愛いな。何処かの可愛くない二人組とは違って」

「「それは誰の事だ!!」」


賑やかに騒ぎ続ける友人達を、長次は木陰から見つめていた。
正しくはその中心にいる人物を。
弾ける様に笑みを振りまく小平太を。

「……」

小平太は陽の光がよく似合う。
賑やかな雰囲気を好む。
だから。

(…俺といても楽しくはないのではないだろうか)

自分は友人達の用には慣れない。
影の下に佇み、彼を見つめるだけ。
きっと彼には。


「…こへ」


小さ過ぎる自分の声は届かない。


ばちり。

「!」

目が、合った。
小平太の丸い瞳が長次を見つめる。

「長次!!」

「今、呼んだろ?なんだ!?」

まさか、そんな。
けれども彼は確かに。
自分の声を拾い上げたのだ。

「…いや、なんでもない」
「?そうか!じゃあ、長次も遊ぼう!!皆でバレーだ!」

小平太の笑顔が、長次に向けられる。
それに引かれる様に長次は木陰から歩みでた。


「小平太、よく聴こえたね」

半ば尊敬と畏怖を込めた伊作に、小平太は笑顔で返す。

「私は長次の声なら絶対に聞き逃さない自信があるぞ!」



ああ、なんて
酔 ってしまいそう!



(どうした、長次。顔が赤いんじゃないか?ん?)
(…なんでも、ない)


藤:花言葉『あなたの愛に酔う』



***
小鳥遊々様へ捧げさせて頂きました。
「現パロ長こへ番外編。六年総出演」でしたが…果たしてご希望に添えているのか甚だ疑問でございます!!
なんかもう、すいませんでした!!
長こへなのに長次さん喋ってないじゃんとか!
ジャンピング土下座の勢いですが、宜しかったらお持ち下さい。
この度は相互ありがとうございました!



***

蔡牙サマと念願の両想い記念に頂きました長こへで現パロの小説でした〜。
長こへでこへ受け美味しかったデス♪

じゃれ合う文次郎と小平太も、小平太が気になるっぽい食満も、こへの頭を撫でてる仙蔵も読んでてニヤけたのは言わずもがな。
結局は長こへというのがもうツボでしたー。
確かに小平太ならどんなに小さくても長次の声なら拾えそうです。
この設定美味しいなぁ♪

タイトルと最後の長次の本音に見事やられました〜。
最後まで凝りに凝った小説、凄かったデス〜(^O^)/
土下座なんてそんなっ…///
私の方こそ感激の意で土下座させて下さいっ!!

忙しい中素敵な小説と相互リンク有難うございましたっ!!
これからも宜しくお願いします〜(^O^)/



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