読書習慣
「何?」
「…読書習慣だ…」
「だからってなんで此処なんだよ!」
自室で「暇だぁ〜」なんて暴れたばっかりに長次に図書室まで連れ込まれてしまった事に小平太は内心うんざりしていた。
「長次は私がじっとしてるのが嫌いなの知ってるよな?」
「…だから今の内に克服するんだな。忍者に知識は必要不可欠だぞ」
半分無理矢理に背中を押され、本棚まで辿り着いてしまった。
小平太が小さく溜息をついたのにも関わらず、長次は何事もなかったかのように文机まで行ってしまう。
仕方なく諦めて本の題名を眺めて回る。
正忍記、忍秘傳、合武三島流船戦用法、御伽草子、源氏物語、百鬼夜行、千夜一夜物語、忍夜恋曲者…
しのびよるこいはくせもの…?
「長次」
「…なんだ」
「ちょっと無茶してでも好きな人と結ばれる、なんて本ある?」
「……はぁ?」
「冗談に決まってるじゃん。この本貸出な!」
はい。と渡された本の題名を見てみれば妖怪鬼女の物語が頭を過ぎる。
恋愛とは関係のない話だが、小平太が興味を持って読んでくれるならばと何も言わず図書カードを抜いて手渡す。
幸せそうな笑顔でお礼を言い小平太は図書室を出て行ってしまった。
…自分の趣味を押しつけて、都合の良いように詳細を隠した。
…俺は曲者だっただろうか……?
⇒END
お題提供⇒六ろのお題様