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雪降る夜の偲び恋
例えばの話。
長い長い忍務がやっと終る。
終了したのが雪の降り積もる真夜中で、貴方は真っ先に何をしたいですか?
「そりゃ布団に入って爆睡したいわな」
「あっそ」
「あ?自分から聞いてその素っ気無さはなんだよ」
「別に」
「ったく、可愛くねぇ奴」
(どうせ可愛くないよ)
なんだか在り来りな解答しか返ってこないのがつまらなくて大袈裟に床に寝転んだ。
ここは文次郎と仙蔵の部屋で、微量だけど火薬の匂いがする。
伊作と食満の部屋は薬品臭くて苦手なんだよな。
………。
「お前なら何をするんだ?」
「へ…?」
考え事にふけってた為、もんじが何を言ったのか一瞬分からなかった。
咄嗟に聞き返した為、変に声が裏返ってしまった。
「おもしれぇ奴…」
口に手をあて明らかに笑い堪えた表情をしている。
(こいつ……。人の失敗を笑いやがって…)
文次郎のこんな行動が腹立たしくて殺意の篭った眼で睨みつけてやった。
「わりぃわりぃ、そんな眼をすんなって」
だが私の本気の睨みつきもこの男には効果無し。
「で、お前なら忍務が終わったら何をすんだ?」
「………」
私?…私なら
「私なら思いっきり走り回る。走り回って忍務の嫌な事、全部忘れる。敵を騙した事も誰かを殺した事も全部忘れ尽きるまでとことん…」
「それじゃ走り疲れたら俺の所まで来いよ」
「え?」
「忍務したら疲れるだろ?身体も心も。わざわざ走り回らなくても俺の所に来ればいつでも慰めてやっから。寒かったらあったけぇ布団でも貸してやる。お前が震えてたら俺がアンカ代わりになってやるから。だから俺の所に来いよ」
文次郎が言った言葉は私の想像を大きく上回ってて、瞬時頭が真っ白になった。
私達、卒業しても今の関係を続けて良いのだろうか?
きっと行く先は暗いものでしかないのに…その時も大切な人を頼って良いのだろうか。
「もんじは…」
「あ?」
「文次郎は私がどんな忍務をしても待っててくれるのか?」
「当たり前だろ」
「誰かを殺しても?この学園の仲間を殺してもか?」
「何をしても小平太は小平太だ。お前が誰かを殺したら1番悲しむのはお前自身だってのは俺が1番知っている。優しすぎるんだよ、こへは。だからさ、その時も…今も俺を頼れよ」
「……っ」
気付いたら私は文次郎に抱き着いていた。
文次郎の言葉に体が震えて、自分の顔を文次郎の胸位置に添えた。
文次郎の心音が聞こえる。
柔らかくて暖かくて
コレが生きてる証拠なんだって…。
「外、雪が降ってきたな」
「そうだな」
「寒いか?」
「少しだけ」
不意に文次郎が笑った。
「そんじゃ熱くしてやるよ。心も身体も。」
そう言ったと同時に布団に押し倒された。
どちらからつかず濃厚な口づけを交わす。
…アンカよりも熱くなりそうだ。
外にはしんしんと雪が積もり始めていた。
⇒END
私は何が書きたかったんだ…っていう。
そして何故にこんな展開になったのか…っていう。