RKRN小説/短編 | ナノ
作品


 マガイモノノ忍ビ

「ああもうっ!何であいつは方向音痴の天才なんだ!!」

いつもの体育委員会の恒例行事が嫌になり滝夜叉丸は思わず叫んだ。

「仕方ないですよ、無自覚の方向音痴と言えば次屋先輩。次屋先輩と言えば無自覚の方向音痴というのが、忍術学園の約束なんですから」

学校の七不思議を捻ったように金吾が言う。

「そうだね。次屋先輩が迷わないと体育委員会って感じがしないよね」

ゼェゼェと呼吸しながらも呑気に喋る四郎兵衛。

「さすが!うちの下級生は良い事言うな♪委員会の花形はこの体育委員だっ!!」

下級生の話を聞いているのかいないのか、つじつまの合わない事を言い1人で納得する我らが体育委員長、七松小平太。

「だが今回は少しハード過ぎたかな?今日のトレーニングはお前達にはキツかったかもしれんな」

そう言いながらも笑う小平太に一同「ホントにそう思ってるのか?」なんて疑問を抱いたものの何も言わず次屋捜索を行った。








「変だ、今度は私が逸れてしまった…」

深い樹海の奥で一人滝夜叉丸が呟いた。
皆と同じように歩いていたのに、いつの間にか逸れて此処に来てしまった。
私に次屋の短所が移ってしまったのではあるまいな!?
そんな事あるハズないと思いながらも内心ゾっとし、更に周りの気配を読もうとした


その時。体育委員の誰でもない、今まで感じた事のない気配を察知する。
咄嗟に草むらに隠れ、気配の持ち主を窺った。

(男が二人。服装は商人のようだが…では、どうしてこんな獣道を通る必要がある?少し逸れば普通の道に行けるのに…それにあの独特の、普通なら気配を感じない歩行。あいつらは忍びだ)

そこで旅人に扮した忍びが話しだした。

「九(いちじく)城の戦が本格的に危ういらしいぞ」

「そいつは面白い事になってきたな」

「まぁどっちが勝っても負けても俺達には関係のない所」

「勝った方もこの長い戦で相当参ってるだろう、そこを俺達の城が盛大に攻めたら其処ら一帯は俺達の領地…」

「いや、その後はもぉっと楽しい事が起きるさ、だって俺達の城には…」


(ゴクっ…)

「おい、其処のガキっ!!」

(!!)

二人の会話に聞き入っていた為、後ろにいた忍装束の敵に全く気付けなかった。

「お前、あいつ等の話を聞いただろっ、生きて帰れると思うなよっ!!」

逃げる隙も無かった。
とっさに周りを見れば旅人姿の忍びにも囲まれていて、気付いた時には三人の忍びに地面に押しつけられた。

殺されると思い咄嗟に目をつむると強かに腹を殴られ、滝夜叉丸は気を失った。








「あーっ!次屋先輩みつけたっ!!」

「おぉ、えらいぞ四郎兵衛。次屋大丈夫か?怪我はないか?」

次屋を真っ先に見つけた四郎兵衛の頭を撫でながら小平太は次屋の傍に歩み寄る。

「置いてけぼりにしてしまってすまなかった。こんな所でひとりぽっちで寂しかっただろ?」

「いえ、、僕一人じゃなかったんで」

「「「?」」」

「ほらあそこ。あの木の枝に鳥の巣があるんです。親鳥が餌を取って帰ってくる度に小さな雛達が顔を出してとても可愛いんですよ。あれを見てたら親鳥が僕を探す先輩達のように見えて。そしたら全然寂しくなかったんです」

そう笑顔で言う次屋に小平太も安心してしまう。
下級生達は次屋の話の後半分を聞いていないようで、興味津々に巣を見ていた。

「そうか…。寂しくなかったのなら良かった。でも次屋、頬が真赤だぞ、寒かったんじゃないか?」

運動後の忍頭巾を渡すのは気が引けるが、如何せん今はこれしか持っていない。
悪いと思いながら次屋の首にかけてやると、この子は笑顔で笑った。


改めて巣を見上げると丁度親鳥がエサを咥えて帰ってきて雛達が顔をだしてピーピー鳴いていた。



「でも先輩、次屋先輩は見つかりましたが、今度は滝夜叉丸先輩が行方不明ですよ」

流石に疲れ声で言う金吾に「何っ!?」と次屋が声をかける。

「次屋先輩を探してる途中で、滝夜叉丸先輩も逸れちゃったんです」

そう四郎兵衛が説明すると次屋は先輩の癖にと言って笑った。

(その先輩も迷った癖に…)

なんて心中でツっコむ壱年には気付きもしない。



「お前達はもう良いから…」

不意に小平太が言う。
(え…??)と思う下級生の心中を察知し続ける。

「そろそろ日が暮れる。夜の山道は危険だし、明日も授業がある。お前達は早く帰って休め。あ、悪いが私の代わりに顧問の先生に滝夜叉丸の事を伝えておいてくれないか」

こくこくと頷き「お疲れ様でした」と言葉をかけ、下級生は帰路を歩きだした。

「今日のお詫びに近いうち団子でも奢ってやるよー」

背中越しに先輩の声が聞こえたが、どうしてだか誰も返事をしなかった。
それほど疲れていたのだろう。



「さてと…」

滝夜叉丸を探すといっても「どうすっかなー」と小平太は試行錯誤していた。

(まぁ手掛かりは皆無なのだし、私の勘基動物の勘で行ってみるか…)


やはり小平太の勘は鋭かった。
唯何とはなしに走った獣道だったが、そこで争ったような後の土を見つける。

人数は四人か…?この小さな足跡は滝夜叉丸に違いない。
滝夜叉丸が山族に襲われるなんてヘマはしないだろうし、他の足跡の異様さは忍びだと確信した。
この辺で一番近い忍者集団といえば、一(にのまえ)城の忍者隊だ。

小平太はそう心の中で呟き、暗くなりつつある樹海に忍んだ。



⇒続…かない。

PCの整理をしていたら昔書いた小説が見つかったんで未完のままですがうp。
最後の方のネタを忘れたんでこれ以上書けませんorz


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