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恐いもの知らずは恐すぎる。
「中在家先輩は戦に参戦する時、誰を相棒に選びますか?」
てっきり七松先輩だろうと思いながら聞いてみた。
だってこの2人は性格こそ違えど陰と陽、月と太陽などと周りにいわれているのだから。
だが、本人の口からは意外な言葉が出てきた。
「…獰猛な狼を素手で殴り倒したり、樹海のように険しい山道を裸足で走ろうとするような、死をも恐れぬ暴君と、私は仕事を共にしたくない」
そういつもの口調で呟いた中在家先輩の表情が一瞬、寂しそうに歪んだのは気のせいだろうか?
******
「そんな事があったんだ」
自室でその日のことを同室者に話した。
すると同室の三郎は聞いているのかいないのか、曖昧に「ふ〜ん」と言うだけだった。
「人の話聞いてる?」
「聞いてるさ。そもそもなんで雷蔵はそんなけったいな質問を先輩にしたんだ?」
「え。別にこれといって理由はないけど?」
「…あぁ、そうかい」
雷蔵のたまに見せる大雑把な性格は七松先輩の「細かいことは気にしない」豪快な性格と良い勝負が出来るんじゃないかと三郎は思いながらも口にするのはやめた。
「でも中在家先輩の気持ちはなんとなく分かるよ」
「え?三郎も?」
「だってさ、俺だって周囲の迎合や付和雷同によって生まれた幻の友情を素直に築こうとする奴とは仕事を組みたくない」
「それって僕のこと?」
「さあ?」
そう言った三郎の表情は先程、中在家先輩が一瞬だけ見せた表情と一緒だった。
「まったく、三郎も中在家先輩も何を考えてるのか分からないよ」
「分からなくて良いよ。雷蔵も七松先輩も」
不貞腐れた雷蔵を特に宥めることもなく三郎は文机に置いてあった本を開いた。
(だってそうだろ?好きな人の弱点は戦では致命的なものなんだ。戦場で自分の想い人の亡骸なんて見たくないじゃないか)
――後日。
食堂前の廊下で珍しく喧嘩をしている双忍の姿を、小平太の隣で何も興味がないように長次は眺めていた。
恐いもの知らずは恐すぎる⇒END
六ろと双忍って根本的な所が似ていると思う。