RKRN小説/短編 | ナノ
作品


 心を癒すのは愛犬だけ

※長次が社会人で結婚して子供もいます。
※小平太が獣化というか、犬です。
※今時のサラリーマンの心の内みたいな感じで余り萌えません。




一流大学を卒業して一流企業に入社して愛する女性と結婚して子供を授かって。
そんな人生が一番幸せなのだと思っていた。
いや、そう思い込んでいた。
それなのに、現実は……。


長次の人生はまるでエリートをそのまま形にしたかのようなものだった。
地元の有名私立高校を出て一流の大学、そして一流の企業とどれも難なく合格した。
入社して暫くのち取引先の会社で働く妻と出会い結婚した。
子供も男を1人女を1人授かり、2人ともすくすく育ち今では16歳と14歳だ。
よくにいう思春期と反抗期という非情に難しい年頃らしい。

だがエリートの行く末は虚しいだけだったと今では痛感する。


最後に家族の笑顔を見たのはいつだろう?
それどころか最近は家族の顔すら碌に見てない気がする。

今日も昨日も明日も、ずっとずっと残業と早入りだったから。
どんなに一流企業でも世間の不景気には敵わない。
大多数の社員や派遣をリストラしてその人手不足を補うのに残った社員が何人分もの仕事をこなす。
よくもまあ倒れないものだと自分でも驚く。
まあ倒れる暇すらないというのが本当の話だが。

今日もギリギリまで残業をした。
帰りの満員電車の中でもみくちゃにされ、疲労困憊の身体で帰宅しても、出迎えてくれるのは誰もいない。
妻と娘はすでに就寝している。
息子は最近友達とやらの家に泊ることが多かった。

玄関の明かりすら灯っていない。

外からでも分かる玄関の灯りは長次が帰宅する頃にはとうに消されて暗闇に包まれていた。
妻としては節電のつもりなのだろうが、なんだかやるせない。
家族の冷たい仕打ちには、もう慣れたつもりでいたが、それでもやはり溜め息をつきたくなるのが人情というものだろう。

いや、ただ1人。


長次が玄関を開けると勢いよく飛び付く影があった。

「わんわん!」

頭を撫でてやりながら片手で灯りを付ける。
一気に明るくなった玄関に見えたのは、ちぎれんばかりに尻尾を振って長次を出迎える一匹の柴犬の姿だった。

「…ただいま、小平太」

「わん!」

まるで「おかえり」と言ってくれているようだ。
長次は愛犬の小平太の頭を再度撫でると靴を脱ぎ、そのままの足取りでリビングへと向かった。

キッチン横のテーブルの上にラップに包まれた冷たい食事が二品置いてあった。

昨日の夕食と同じメニューだな…。

妻と子供は外食でもしたのだろう。
メニューといっても殆どが冷凍でさも手作りのようによそってあるだけ。
白米だけはと期待はしたのだが、キッチン隅のゴミ箱から冷凍米の袋が見えた途端に理解した。

背広を脱いで窮屈なネクタイを緩めると力なく椅子に座った。
先ほどまで可愛くもうるさい小平太だったが、長次が冷たい夕食をそのまま食べている間、長次の傍で静かに伏せていた。

耳はピンと立てていて、尻尾は相変わらず機嫌良さそうに揺れている。
時折長次と目が合うと嬉しそうに「くうん」と鳴いた。

「…人間よりお前の方が温かい心を持っているなんて、本当に不思議だな。いつも出迎えありがとう」

長次がそう呟くと、小平太のピンと立った耳がピクピク動いて「わん」と吠えた。








⇒END

書いててよく分かんなくなったので強制終了。
人生に疲れてる長次って格好良いと思う。
その横で犬だから長次を見守ることしか出来なくてずっと傍から離れない小平太は可愛いと思う。


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