RKRN小説/短編 | ナノ
作品


 俺の恋人を紹介します。

※文次郎の両親が出てきます。

扉や窓を全開に開けた忍たま長屋の六年い部屋。
部屋の主の文次郎は返却期限の迫る本を読みながら、訪ねた小平太は自室同然に床に寝転がりながら会話をしていた。

外の空気はだんだんと心地よい風が吹き、もう秋の季節なのだと実感する。

「もうすぐ秋休みだな」

「そうだな」

「お前は秋休みの間どうするんだ?やっぱり厚着先生の所に居候か?」

「んー、それも良いけど学園に留まるかもしれん。最近忙しそうにされてるし」

「そうか」

帰る家のない小平太は長期休暇になると厚着先生の家に居候することが多い。それは一年の頃からずっと変わらず、反りが合わない担任教師よりもその頃から体育委員会顧問だった厚着先生の元で世話になっていた。
厚着先生は元々一人暮らしで同居人が一人増えるくらい対して変わらなかったのだろう。時には小平太のことを我が子のように褒め、叱り、教育していた。

そのお陰か小平太の豪快な性格は直らないが、食事の作法や書道の心得等は意外にも礼儀正しくなった。これも厚着先生の教育の賜物なのだろう。

そして四年に進級した頃からだろうか。
小平太は長期休暇になると厚着先生の元だけではなく、友人の家で世話になることも多くなった。中でも長次や文次郎の実家へは何度も世話になっている。みんなの都合が悪い時は、一人学園に留まることもあった。

そういえば夏休みの最終日に「次の長期休暇には小平太は来ないのか?」と文次郎の両親が言ってたのを思い出す。
文次郎の両親、特に父親は小平太のことを豪く気に入っていた。力に自信のある小平太は漁師である父や海女である母の手伝いをしていたし、暇があれば文次郎と近くの山を登り山菜や獣肉といった食材をよく調達していた。

文次郎も帰省した際には家の手伝いをするのだが、やはり若い男が一人と二人では仕事のペースが明らかに違う。
特に体力に自信のある小平太は朝から夜までよく動き、村の大人たちが仕事で忙しい時は一緒に働いたり、村の子供たちの面倒を見たりと、本当に頼りになる存在だった。
父の力比べや杯の相手もよくやっていた。

そういえば一度、酔い潰れて眠る小平太の傍で父が「この子も我が家の子だったら良かったのに」と呟いたことがあった。それは文次郎と小平太が双子の兄弟だったら、という意味なのだろう。

幼い頃から人に甘えるのが苦手だった文次郎は、両親のこともどこか赤の他人のように感じていた。そんな文次郎に対して両親は特に気にもせず、逆に個性だからと割り切って変わらず育ててくれた。

忍術学園への入学を決意したのも文次郎の意思だった。
そのことを初めて両親に話した時、内心では強く反対されると覚悟していた。そんな文次郎に対して父親は豪快に笑い「私よりも強い立派な大人になれ」と強く肩を叩いた。
母親は悲しみも呆れもせず、ただ「何があってもあなたはあなた。あなたの人生。そのなかに私たちがいる」と賛成してくれた。

まさか忍者を志す学園で、生涯の仲間を見つけるとは思わなかった。



「そういや、うちの親が小平太に会いたがってたぞ。秋は漁に作物の収穫に忙しいから人手不足なんだってさ」

「そうか。では土産を持って"帰ろうか"」

小平太は文次郎の両親の好む土産を把握している。
甘味や酒、装身具など不思議と今まで失敗はなかった。
中でも以前、母に贈った香り袋は大層喜んでいた。母の好きな柄と色、好きな香りがピタリと一致していたからだそうだ。聞けばいつも食している物、身に付けている物を見れば大体の好みは分かるのだそうだ。

今度は何を土産に買っていこうかと、今から楽しそうに考えている小平太の横で文次郎も思考していた。



今から両親に帰省の文を送ろうか。
『大切な恋人を連れて帰る』と一言添えて。



恋人を見たとき、両親はなんと言うだろうか。



⇒END

こんな親からあんなギンギンな子は生まれんだろうと書きながらツっコミ。
小平太の居候ネタは萌えるのにあまりイメージ湧かない。
長次や留三郎、仙蔵の実家でお世話になる小平太の話も読みたいです。(書けない)


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