RKRN小説/短編 | ナノ
作品


 青春の哲学

小平太と喧嘩をした。
いつものように何気ない言い争いで、でも今回は思いもよらぬ展開になって。

しまったと思った時にはもう遅かった。

「こへ…「もういいっ!!」

言い終わらぬ内にあいつは怒鳴り、部屋を出て行ってしまった。

文次郎はその一連を呆然と見つめる事しか出来なかった。




その頃、食満は用具倉庫に来ていた。委員会活動では無く、仙蔵のパシリで道具を戻しに来ていただけなのだが。

「ったく仙蔵の奴、人をなんだと思ってんだ!」

ぶつぶつ文句を言いながらも道具は丁寧に片付けていく。
すると奥から何者かの気配がするのに気付いた。

「……ん?誰かいるのか?」

敵かもしれないと恐る恐る声の傍まで近寄ると

「……食満…」

棚の片隅で縮こまるようにして小平太が泣いていた。

「小平太どうしたんだ!?」

「………」

「何かあったのか?」

「………」

(何かあったから泣いてんだよな…。こいつが泣くとしたらあいつ関係の事しかねぇ)

小平太は俯くだけで何も言いそうにない。
どうすべきか考えながら頭を撫でると震えだした。このまま此処にいても埒があかない。

「こへ、帰るぞ」

「……うん」

小平太の手を握り用具倉庫を後にした。



帰ると言った筈が道は長屋とは別の道を行く。
どうしたのかと小平太は疑問に思い聞いてみる。

「食満…。帰るってこっち、長屋じゃない…」

「ああ、その前に」

「?」

そのまま食満について行くと食堂に辿り着く。

「おばちゃん、お汁粉2つ」

おばちゃんと二言三言話すとお汁粉を持った食満は、入口に止まったままの小平太を見やる。

「何ボーっとしてんだ?早く座ろうぜ」

「………」

「ほれ」

半端強引に席まで促され、入口付近の席に向かい合うように座ってしまった。

「食満…」

「俺の奢りだから気にすんな。早く食え」

「………うん」

食満のさり気ない優しさにまた泣きそうになるのを耐えて、お汁粉を食べ始める。
口に含んだ瞬間に甘い小豆の味が口中に広がり、心がやっと落ち着いた。

「…ありがとう」

「気にすんな。いつも元気な奴が静かだと俺が落ち着かないんだよ」

「ごめん…」



それから会話は続かない。
二人の汁粉を綴る音だけが食堂に響く。

なんだか気まずい…と小平太が恐る恐る食満を見ると不意に食満が独り言のように言った。

「あいつも悪気があって言ったんじゃないさ」

「えっ?」

粋なり何を言い出すのか?と不思議に満ちた瞳で食満を見つめる。
傍から見れば食満は汁粉を食べる事に集中しているようにしか見えない。

「へ?ってお前が一番分かってんだろうが。どうせ文次郎と喧嘩したんだろ、お前の顔見たら嫌でも分かる。今回はいつもより深刻みたいだが、でもあいつは口は悪いが根っからの悪奴じゃないのはお前が一番よく分かってるんだろ?」

汁粉にしか目をやらなかった食満がやっと小平太を見て、自然に笑う。

「早く仲直りしろよ」

「…食満」

食満なりの心遣いに小平太の寂心が救われた気がした。早く文次郎に会いたいという衝動に駆られる。

「食満、ありがとうっ!」

いつもの笑顔でそう言うと、空になったお椀を戻し六ろの長屋に走っていった。

「馬鹿か…俺は」

小平太のいなくなった食堂で一人呟き、寂しそうに笑った食満を見た者はいない。





翌日―――

小平太の傍には文次郎がいた。
相変わらず喧嘩は絶えないが仲直りも早い。
これがパートナーというものなのかと思うと、羨ましくもある。

その日の夕方、食満が廊下を歩いていると向こうから文次郎が歩いてきた。
擦れ違いざま文次郎がボソっと礼を言うので、何のことだと聞き返してやる。

「小平太の事だ。汁粉ごちそうになったな」

「ああ。でも二度目は無いと思えよ」

「分かってるよ。もうあいつは手放さねぇ。お前なんかに奪われてたまるかよ」

「せいぜい努力すんだな」

「お互いさまに」

互いにほくそ笑んで再び歩く。
食満の背後から小平太が、文次郎!と笑顔で叫んでいた。



⇒END

やっと出来ました。文こへ←食マンセ(^O^)/
本気で喧嘩する文次郎と小平太に萌えます。
小平太を横取りしたいけど理性が邪魔する食満が好きです。(逆に隙あればこへを横取りしようとする腹黒食満も好き←問題発言)
ぶっちゃけ小平太がモテモテだったら管理人によによ///


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