RKRN小説/短編 | ナノ
作品


 子守唄の音色

「やっぱ休みの日は暇だな」
「あぁ…」

忍術学園の休日、何をするでもなく暇をしていた文次郎はなんとなくろ組の二人の部屋に来ていた。

仙蔵は学園長のお使い。伊作は薬を調達しに町へ。食満はその伊作の荷物持ち。
…小平太は?

「なぁ長次、小平太は?」

「…あいつも暇だと言っていた。学園内を散歩してくると…」

「ふーん…」

どうせなら小平太と一緒に鍛練でもするか、二人きりだったらもしかすると良い雰囲気になるかもしれねぇし。そう思いながら長屋を出る文次郎に続き長次も立ち上がった。

「?」

「…俺も行く」

(ちぇっ、長次の奴感づいてやがる)

内心毒づきながらも文次郎と長次は小平太を探しに部屋を出た。



******



「なぁ、見つかったか?」

「…いや……」

「まったくこへの奴、どこ行ってやがる」

「…高い所からでも探すか?」

一本の高い木を指さしながら長次が言う。成程あの木ならある程度遠くまで見渡せる。忍者のたまごらしく俺達はてっぺん目指して軽々と跳びのった。
だが小平太の姿は今だ見当たらない。


「何か見えるか?」

「…忍冬が咲いている」

「バカタレ、そんなのはどうでもいいんだよ」

長次のやつ、本当に探す気があるのか?
片目で睨みつけてから再度周辺一帯を見渡すと遠くの中途半端な岩の上に見慣れた青い髪と深緑の制服が見えた。

小平太だ。

隣に誰かいる、あの井桁制服は一年生だな。
体育委員の後輩ではない。何故こへと?
勿論此処からでは小平太と一年の声が聞こえる筈もなく、文次郎は無意識にイライラしていた。


「…気になるか?」

粋なり長次が問うてきて俺らしくもなくドキっとしてしまった。

「んなこたぁねぇよ!あいつをいちいち気にしてられるか!」

「…そうか、俺は気になるから行ってくる」

スタっと木から下りて長次はこへのいる方向へと走っていった。

「ちょっ、おい待てよっ」

一足遅れて俺も長次の後を追いかけた。

(気になるだって?)





やっと小平太が見える範囲まで行くと粋なり長次が止まった。

「…っあぶね」

「…ここからなら聞こえるな」


〈んじゃ私が手伝ってやろうか〉

〈え?七松先輩が〉

〈今日はすっかり暇してて力が有り余ってるんだ〉


(なんて事はない、小平太も俺達と同じ暇余ましという事か…)

文次郎は内心そう思いながら二人の会話を盗み聞きする。と隣にいた長次が歩きだし小平太の元へ歩み寄ろうとした。

「長次お前、何してんだよ!小平太に気付かれるじゃねえか!」

文次郎自身は気配を消しているので小平太に気付かれる事はないだろう小声で長次を怒鳴るも

「…何故隠れる理由がある」

「あ…」

確かに長次の言う事は正しい。
どうしてこんなにコソコソと隠れる必要があったのだろうか?
気配を隠してまで忍び寄って…文次郎自身も分からなかった。

もとい元々は小平太を誘って鍛練をするつもりだったので長次に続き文次郎も歩きだした。


「あの、お気持ちは有難いのですが…七松先輩じゃ子守りは難しいのでは…」

「なにぃ!私には出来ないだと?」

「俺達も手伝っても良いぜ。休みの日は退屈でしょうがないんだ」

突然の文次郎達の登場に小平太は驚くかと思ったが普通に笑みを浮かべただけだった。




その日の夜、ろ組の長屋で三人だけの小さな宴会をした。

「文次郎ってさ、小さな子供に対してはお父さんみたいに優しく接するよね。委員会でもあんな感じだったら後輩の受け良いのに」

「誰が親父だバカタレっ!俺の故郷じゃ共働きの親が多いから近所の子供や年寄りが集まって子守りをすんだよっ」

「ふーん…それじゃもんじ、子守唄うたえる?」

「そんなん唄うか!」

「…戦え会計委員会」

「長次グッジョブ!」

長次の言った言葉が適格で小平太は笑い転げ文次郎は酒の原因と言えない程に赤くなってしまった。

「…委員会ソングといったら伊作も保健委員の歌を唄っていた…」

「はぁ?あいつ歌なんて唄うのか?」

「もんじ知らないのっ!?伊作は歌が上手いんだよ。小さい時に怪我して泣いた時にはいつも子守唄を歌ってくれてさ、どういえば良いのか分からないが安心する歌声なんだ」


成程、伊作は人を助ける事に生き甲斐を感じる男だ。
人の心を助ける歌声、それも治療の一つなのかもしれない。

小平太の言葉を聞いた時に内心文次郎はこう思った。

(俺は小平太の子守唄を聴いてみたい…)



⇒END

アニ忍16期40話で妄想。
今更な鍛練トリオ話でごめんなさい。
途中まで去年の今頃に書いてたのですがすっかり忘れて昨日発見しました。
忍冬が咲く時期に書いたみたいですな。

アニメの文次郎と長次の登場はタイミングが良すぎて小平太を監視していたに違いないという都合良い妄想。
そんな二人に小平太は笑顔で見てただけだけどそれは気配を感じていたからだとか。
伊作の神唄も管理人の妄想。


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