「あ、天根くん?」 部活のことでバネさんを探しに三年の階へ来ていた俺は背後から誰かに呼ばれ、驚いて振り返った。 三年生に、俺の知り合いの女の人はいなかったはず、そう思いながら恐る恐る振り返るとこの前海で見かけたサエさん達の幼馴染の、…たしか、みょうじ先輩が小さく首を傾げて綺麗な黒髪を肩から落として俺を見つめていた。 「えっと、この前の」 「あ、覚えててくれたんだ。てっきり忘れてるかと思った。」 そう言ってほっと胸をなでおろして小さく笑う彼女に、実はさっきまで忘れてましたとは到底言えなかった。言えるわけがない。 そう思いながら先ほど罪悪感で逸らした目線を下に戻せば彼女は今度は不思議そうな顔をして「そう言えば、なんで三年の階に?」と聞いてきた彼女を見て、コロコロと表情が変わって面白い人だ、と思った。 「部活のことで、バネさんに」 「ああ、黒羽くんね。呼んで来ようか?」 「いいんですか?」 「うん、呼ぶくらいお安い御用だよ」 「…じゃあ、」 「ふふ、そんなに緊張しなくてもとって食べたりしないよ」 と、俺が緊張しているのを見透かして言ったあと、友達と喋ってるバネさんのところまで言って肩を叩き、俺の方を指差して何か言っていた。 そう遠くはなかったけれど、周りがうるさくて聞こえなかった。 少ししてサンキュ、と言うバネさんの声の後にみょうじ先輩のどういたしまして、という言葉は聞こえた。 「ダビデ!なんだよ急に」 「バネさん…」 「あ?」 「みょうじ先輩って、声、綺麗…す、ね」 「…はぁ?」 「あっ、え?」 「どうしたんだよダビデ、恋か?」 「ちょ、何言ってんすか!てゆーかバネさん、今日の部活のことなんすけど…」 バネさんと話しながら横目でみょうじ先輩の方を見てみた。 先輩は、友達と話してた。あ、やっぱり声綺麗。 「って聞いてんのかよ!」 「あ」 「あ、じゃねーよ!」 「って!バネさん痛い…っ!」 「みょうじばっか見てるからだろうが」 バネさんって暴力的だと思う。 揺れる心拍数 (僕の心臓、どうしたの?) -------------------- 2話目の更新がすごく遅くなるという罠。 すみません!ごめんなさい! 120805 ← top |