メランコリニストの日常 | ナノ
先輩
「なまえっ!昼だべ昼!起きろー!」

いきなりゆさゆさと体を揺すられて目が覚めた。
なに、なにが起きたの。

「な、に…?ふんか…?ひょう、よーざん、うぇー?」
「起きるべ、お昼」
「お昼…」
「お弁当持ってきたから、屋上行こう」
「屋上…うえー…おは、よ」
「相変わらず変な起き方だべ」

うっさい、と言って未だ閉じようとする目を擦れば鷹山に顔洗う?と聞かれた。
うん、と小さく頷けば水道こっち、と腕を引かれた。

「ひょう、おはよー…」
「まだ眠たそう」
「うー…ねぶい、」
「水道ついたよ。タオルあるから、ホラ」
「うぇー…よーざん、ありがと」

ばしゃばしゃと適当に顔を濡らせば、ひんやりしてちょっと気持ちいい。
洗い終わって俯いたまま手を伸ばせばそっちじゃない、と言われた。

「タオル、ご飯」
「まだ眠いんかい!」
「早く屋上行こうよ」
「んー…よし、行こう」
「よっしゃ、いくべ!」
「こけるって」

走って階段をあがるヒョウに、置いていかれないように走るんだけどなんだか面倒になってやめた。
鷹山に到っては着けば別にいいでしょ、と言ってる。
まぁ、いいか。

「鷹山、今日お昼何」
「今日はお弁当」
「中身は?」
「から揚げとか」
「んー…一個頂戴」
「好きなだけ食べていいから」
「いんない。一個でいい。つか一個しか無理」
「草ばっか食べてるからだよ」
「野菜と呼べ」

なんて会話をしながら屋上の扉を開けば、先に行ったヒョウと、その先輩がなんか話してた。
あ、八熊先輩いる。

「ヒョウ、」
「おっそいべ!あ、そうそうなまえ、ケータイ!」
「お前まだ渡してなかったのかよ」
「だ、だってずっと保健室に居たんすもん!なまえが!」
「あ?そーなのか?」
「はぁ」
「なまえ、返事」
「はいー」
「え、ヤック知ってる子?」
「おう、今日不破に呼人の伝言伝えに行くときぶつかった奴」
「なんで携帯?」
「面白そうな奴だからメアド交換しようと思ったらケータイ貸すから勝手に入れとけって」
「そんな言い方、してない」
「なまえ?」
「…ですー」

横でなんかもう一人の先輩が笑ってた。
むっとしてご飯ーと言えば鷹山ははいはい、と言って私のお弁当を渡した。

「ありがと」
「ねぇ、俺ともメアド交換しない?」
「あい、ケータイ」
「ふは、俺のときと一緒」
「ん…はい、入れた」
「あい」
「俺も混ぜて!」
「ヒョウの、知ってるし」
「うっせ…」

さっきまで静かだったえっと…白石先輩が小さく呟いた。
その言葉にいち早く反応したのは八熊先輩。

「んだよ、お前」
「うっせーんだよ、飯くれー黙って食えよ」
「あぁ?」
「両方、うっせー」
「ぶはっ」
「ちょ、なまえ何言ってるの!」

小さく呟いたつもりが、聞こえてたのか二人ともが私も見た。
何、睨んでんの。と言いたかったけれど先輩だから口をつむぐ。

「…わりぃな」
「え」
「は?」
「あぁ…はい」
「ぶふっ」
「何笑ってんだよ横山」
「や、ちょっと…ふは、なまえちゃんの反応が面白くて、ふっ」
「…わりぃ」
「え」
「なんだよ」

なんだか知らないけど、白石先輩にまで謝られた。
ハラハラしながら見てたヒョウも呆気にとられたのか、口に入れようとしてた鷹山のから揚げを落とした。

「や、なんでも」
「つかお前、敬語無理?」
「無理」
「ぶはっ!やっぱなまえちゃんおもしろ…ぶふっ、あははは!」
「あー、じゃあ敬語じゃなくていいぞ」
「マジ?やったねー」
「…軽」
「るっひゃい」

鷹山のから揚げを一個食べながら言えばまた面白かったのか、横山先輩が笑った。
それにつられたのかヒョウも笑って、八熊先輩も笑った。

「つか、八熊先輩って呼びにきー」
「じゃあヤックでいいぞ」
「おっけ、ヤック」
「なんだ」
「なんもない」
「ぶは!」
「お前笑いすぎだろ…」
「あと横山先輩って言いにくい。白石先輩も」
「俺?」
「俺もかよ」
「敬語なしでい?」
「いいよ、そのほうがなんか面白い」
「…」
「返事」

いつのまにか空気になっている鷹山をちらりと見ればもくもくとご飯を食べていた。
うわ、から揚げ重たい。気持ち悪い。

「いいよ、好きにしろ」
「っしゃ、じゃあ静ちゃんね」
「は?」
「え?」
「「「ぶはっ!」」」

今度はヤックとヒョウも一緒になってふきだした。
笑っちゃいかんよ。

「だめ?」
「無理」
「じゃあ静さん」
「…きも」
「お前もな」
「「ぶはははっ!!!」」
「…てめぇ、」
「ごめん、静ちゃん」
「…」
「あ、俺は?」

横山先輩が俺は、と自分を指差してる。
うーん、と少し首を捻って、下の名前は?と聞いてみた。

「あ、俺横山篤士って言うんだよ」
「じゃあ、あっちゃん」
「ちゃん?」
「くん?」
「くん」
「あっくん」
「萌えるわ」
「キモイ」
「「ぶふっ」」

キモイと言えばきれいな笑顔のままピシリと固まったあっくん。
今日笑いすぎだろ、と思いながら放置して、鷹山をみれば食べ終わったのかお弁当を片付けていた。
もう帰る?と聞けばうん、と言っていたのでヤックと静ちゃんとあっくんにじゃあね、と言えばおう、と返してくれた。
なんか、友達増えた。


なんか友達増えた