コツン、と。ローファーが音を立てる。 はぁ、と。息を吐けば白い煙が吐き出された。
「サエ、寒いよ」 「うん、俺も寒い」 「じゃあなんで今時分に海なんて」 「いいじゃん、海。好きだろ?」 「好きだけど、」 「わがままだなぁ、なまえは」
あはは、と声を出して笑うサエの脇腹にチョップをかませば「うぐっ」と小さくうめいていた。 ざまぁみやがれ、とフンと鼻を鳴らせばくすくすと、まるで亮や淳みたいに笑った。 それにまた腹が立って、むっとした顔でサエを睨み、「なに」と低めの声で言えば「可愛いなぁって、思って」と返ってきた。
「なに、いきなり」 「あれ、お気に召さない?」 「当たり前じゃん。バカにしてる?」 「してないよ」 「知ってる。けど、そう聞こえる」 「なにそれ」
またくすくすと笑うサエにつられて、私も笑う。 潮風が冷たくて肩をすぼめればサエが後ろから抱きしめてきた。 こんなことするなんて、珍しい。 そう思いながら腹部に回る腕に手を重ねた。
「寒いよ、サエ」 「抱きしめてるのに?」 「それでも、寒いもん」 「じゃあ、もっと強くしてあげる」 「あはは、それ、意味ないじゃん」
声を出して笑えばサエは、本当に力を強めてきた。 ぎゅうぎゅうとひっつく体。肩に乗せられた顔。 首にかかるサエの髪の毛がくすぐったくて小さく笑えば、サエも幸せそうに笑った。
「冬の海も、いいだろ?」 「うん、そうだね」 「二人だから、いいんだよね」 「ふふふ、そうかもね」 「あ、はぐらかした」 「あはは!」
まるでドラマに出てきそうなラブラブなカップルよろしくうふふ、あははと笑っていれば風が、先ほどより冷たくなってきた。 腹部の腕をほどいて手をつなぐ。 そろそろ帰ろうか、と微笑むサエにうん、と頷いて握った手に力を込めた。
わがままシープリンセス
またいつか、二人で海に来ようか。
-------- タイトルは秘曲様より。 スランプ脱出です!!やっと!!! あと佐伯、誕生日祝えなかったからお詫びに、ね!
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