「樹っちゃん、わたし海と結婚したい」

いつも笑顔でえへへと笑って二言目には俺の名前を呼ぶような能天気でちょっと馬鹿ななまえが至極真剣な表情で、そして真剣な声色で俺にそう行ってきたのは約1分前。
ちなみに1分たった今は何をしているかというと、コップに緑茶をいれて、なまえをソファに座らせてとりあえず落ち着きなさいと言って緑茶を出したところである。
一体全体、なんだっていうんだ。

「で、どうしたのね」
「私、海と結婚したいの!」
「まず、無理なのね」
「無理じゃないできる!」
「どうして海と結婚したいんですか?」
「海が好きだから」

平然と至って真面目な表情で言いのけるなまえに少しばかり頭痛がした。
いくら海が好きだからって、それはどうかと思う。
確かになまえは海が好きだ、大好きである。
それは俺たちが、第三者が見ていても分かるくらいに海を愛している。
なまえは、放って置けば四六時中海で遊んでいるような子である。
中学生にしてはまだまだ幼く、しかし小学生にしては中々敏い。
なまえの脳を例えるのならばそんな感じである。
小学生寄りではあるが、常識とマナーとは身につけている。
そして雑学や豆知識など、日常生活において活用できる細かな術をよく知っている。
そんななまえが、そんなことを言うなんて。
俺には理解できなかった。

「海が好きだから、海を結婚したいのですか?」
「うん」
「じゃあ、みんなはどうですか?」
「好き」
「みんなと結婚したいですか?」
「う、んー…?」
「…思ったこと、言っていいのね」
「みんなとは、結婚できないよ」
「うん」
「一夫多妻制でも一妻多夫制でもないから、結婚は1対1になる」
「そうですね」
「でもみんな、好き」
「うん」
「樹っちゃんも、大好き」
「…ありがとう」
「みんな以上に好きになれないから」
「はい」
「でね、私、何より海が好きだから」
「はい」
「海より好きになれるもの、ないもん」
「…」
「だから、私は海と結婚したいの」
「…なるほど、なのね」

つまり、なまえの言葉をまとめると。
みんな大好きだけど、結婚は一人としかできない。
でもみんなと結婚したいわけでもなくて。
今後、俺たち以上に好きになる人も見つからないと思う。
だったら、私は海と結婚したい。
と、こうなるわけで。
中々可愛いことを言ってくれるのね、と内心息を吐き、隣であーだのうーだの言って緑茶を啜るなまえの頭を優しく撫でた。
視線だけこちらに投げやり、なおもあー、うーといなって時折俺の名前を呼ぶ。
ふふ、と小さく笑みを漏らせば首を傾げていた。

「じゃあなまえ、俺たちの誰かと結婚すればいいのね」
「んー…」
「不服?」
「んーん、違う。」
「じゃあ、どうしたのですか?」
「私、可愛くないから」
「…」
「みんなにはもっと、いい人いるもん」
「…それで、?」
「私、海と結婚する」

結局そこにいきつくんですか。と呟けばふふふと笑って未だ頭に置いたままだった俺の手に擦り寄ってもっと撫でてと言わんばかりの視線を送りつけてきた。
はいはい、と頭を撫でれば嬉しそうな顔をしてこうつぶやいた。

「でももし、結婚するなら樹っちゃんとがいいなぁ」

麻酔のような囁き

愛の言葉は紡がないのが僕たちの愛情さ

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全く意味のわからない小説ができてしまいましたね。
なんでしょうかこれは。
タイトルは茫洋様より

120901
 

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