いかにも私は可愛いです、という様な態度で執拗にボディタッチをしてきては私と遊ぼうよぅ、なんて気色の悪い猫なで声で俺を誘おうとするこの女に俺は目眩がした。 正直、本当自分で言うのは気が引けるけど、俺はモテる。 そんじょそこらの男どもには負けてないと思う。 現に今、世間一般で言う逆ナンというものを受けているわけで。
「ねっ、一緒に遊ぼうよぉ!」 「ごめんね、俺、人待ってるんだ」 「いいじゃん!うちらと遊ぼ!」 「ごめん、本当無理なんだ」 「えぇー!うちらとは遊んでくれないのぉ?」 「…いい加減に「佐伯?」
俺の声を遮って、俺の名を呼んだその声には聞き覚えがあった。 女の子にしては、少し低めで、だけど暖かで柔らかい声、 このする方を向けば、無表情で俺を見つめるなまえの姿が。 ああ、会いたかったという意味を込めて腕にまとわりつく女どもを振り払ってなまえに駆け寄り、壊れ物を扱うように優しく抱きしめた。 暑い、と言いつつ俺を振り払おうとはしない、その優しさが愛しくて俺は腕に、少しだけ力を込めた。
「会いたかった、遅いよなまえ」 「ごめん、近所の子の金魚すくい手伝ってた」 「金魚すくい…」 「はい、お土産。で、あちらのお嬢さんたちは?」 「知らない、勝手に絡んできたんだ」 「逆ナンされたのね」 「ん、ごめん」 「いいよ、怒ってない。いつものことだし、心配もしてない」
呆気にとられているケバいギャルたちを尻目になまえとイチャついていれば一人が憤慨し、彼女たちを連れて何処かへ行ってしまった。 可哀想に、という視線を投げかけているなまえの顔をぐっとこちらに向けさせ、視線を交える。 どうしたの、とこれまた無表情で聞いてくるなまえ可愛い、なんて考えつつ口からは「俺を見てよ」と醜い嫉妬の声が漏れる。 それを聞いたなまえは、本当に小さく笑って子供みたい、と言って俺の手を掴んで歩き出した。 「どこに行きたい?」「どこでもいいよ」「私も一緒」「じゃあ海に行こう」「いいよ」 そんな会話をして、俺たちは喧騒から離れ、お祭りで賑わう彼らに背を向けてゆっくりと歩き出した。 なまえと行くならお祭りよりやっぱり海がいいな。 なまえは海がすごく似合うからね。
あなたと共にある (君の白い肌には海の深い青が映えるのさ)
------------------ 祭りを開催する前に長編を更新してください。 と、自分に言いたいです。
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