「におー」
「なんじゃ」
「構え」
「後での」
「におのぶぁか!」

ぽかっと軽く頭を叩けばあいたっと言って仁王は少しだけ振り返ってまたラケットに視線を戻した。
なにさ、構ってくれてもいいじゃん。と小さく愚痴を零してこちらに向けている背中をじっと見つめる。
仁王、意外と背中広いよねぇなんて考えていたらいつの間にか手が伸びていた。
そっと、優しく仁王の背中に触れる。ビクリと肩がはねた。これは面白い。

「…なんじゃ」
「え?あぁ、背中広いなぁって」
「そう?」
「うん、におの背中好き」
「なんじゃ、背中だけか」
「なんか子供みたい」
「まだ子供じゃよ」

そう言って、グリップを巻き終えたのか仁王は体をこちらに向けた。
窓から吹き込む爽やかな秋風で仁王の綺麗な銀の髪が揺れる。
少し伏せ目がちにこちらにやす視線が、揺れる銀髪が、憂いを帯びたようなその表情が。
とても美しく、絵になると思った。

「…におって、ずるいね」
「は?」
「男なのに、女より綺麗」
「…セクシーじゃのうて?」
「うん、すごく綺麗。羨ましい」
「なんか、複雑じゃのう」

照れくさそうに視線をそらし、小さくはにかむ仁王のその表情がまた、美しくて。
そっと頬に手を添えると、驚いたような顔をして私をその綺麗な瞳に写す。
右手の親指で目元をなぞり、左手の親指で唇をなぞる。
きめ細かな肌。陶器のように白くニキビひとつない、肌。
綺麗だ、ね。
口から零れたのは何度も口にした言葉だけだった。

「…お前さんの手、やわっこいの」
「そう?」
「ん、女の子って感じじゃ」
「へへ、ありがとう」
「どういたしまして」

顔から手を離し、小さく笑って見せれば同じように小さく笑う仁王。
やっぱり、仁王って綺麗だ。

じわり、じわり

深みに嵌って、堕ちてゆく。

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久々に仁王。
なんだこれは誰だこれは。

120921
 

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