私は貴方が好きだと言った。あなたも私が好きだと言った。けれど私たちの間には何もなかった。私たちを繋ぐものはなにもなかった。私たちはお互いを縛ったりは決してしなかった。相手のため、彼のため、彼女のため。そう自分で言い聞かせていたのだ。私も、彼も。そうしなければいけなかったのだ。そうしなければいけない理由があったのだ。私たちは愛し合っていた。それこそ海よりも深く愛し合っていた。誰になんと言われようとこの恋心は消えることなどなかった。私たちは常に一緒にいた。学校に行く時も、休み時間も、帰るときも、遊ぶ時だって勉強する時だって一緒だった。一緒にお風呂にも入っていたしお揃いの歯ブラシで洗面台に二人で立って一緒に歯磨きもした。同じ布団で寝ることなんて当たり前だった。放課後は、彼の部活があって一緒にはいれなかったけれど、帰る時は必ず一緒だった。間を埋めるようにベタベタとひっついて帰っていた。それが私たちにとって当たり前だったのだ。

「虎次郎、」      「なまえ、」


お互いの名前を呼び合っては幸せそうに微笑んで、手を握って離さないように力を込める。抱き合って背中に手を回して首元に顔を埋める。首筋にかかる髪の毛が少しくすぐったかったりもしたけれどそれすら愛しい。そう、感じていたのだ。私も、彼、虎次郎も。だけど私たちは離れないといけなかった。いつまでも一緒にいることは、できないのは十二分に理解していた。離れたくないね。そうだね。虎次郎がいないと死んじゃうよ。俺も、なまえがいないと死んじゃうと。ずっと一緒にいたもんね。これからも一緒にいたいよ。私もだよ。そう言って私たちはおでことおでこをコツンとひっつけた。髪の毛がしゅり、と音を立てて、何故か気恥ずかしかった。虎次郎の真っ直ぐな目が私を捉える。綺麗な瞳に映った私は酷く醜い顔だったような気がする。「こじろ、」「好きだよ」そう言って私たちは、初めて唇を重ねた。虎次郎の唇は少しカサカサしてたけどあったかくて、それでいて柔らかかった。「キス、しちゃった」「…もういっかい」強請れば強請るだけ、とろけるように甘く優しいキスを落としてくれる虎次郎。私の目から、いつの間にか涙がこぼれていた。泣かないで、と言って親指で私の涙を拭う虎次郎は酷く美しかったのを覚えている、今でも鮮明に覚えている。形の整った薄く、しかしふっくりとした唇が何度も私のそれと重なる感触。小さく震える私の体。私を優しく包み込んでくれる虎次郎の逞しい腕。あやす様に一定のリズムで叩いてくれる虎次郎の手。私を捉えて離さない、虎次郎の真っ直ぐな瞳。虎次郎、私、虎次郎の事が。あなたのことが、ずっと、ずっと。


僕を置き去りにする歩幅

待って、僕はまだここにいるんだよ。


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結局意味の分からないものに…
佐伯と双子の子の話です。小さい頃からずっと一緒にいて、いつの間にか依存してたと。
つまるところ近親○姦というものですね。楽しかったです。
タイトルは茫洋様より

120917
 

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