「あ、パンツ見えた」

「は?」

間抜けな声を上げて、声の聞こえた方を見ると千葉のロミオこと佐伯が口元に笑みをこさえて私のスカートを指差していた。
え、パンツ見られたんだ私。

「結構派手だね」
「いい色でしょ」
「うん、紫。似合ってる」
「ありがと」
「でもやっぱり白がいい」
「純白か、」
「俺、汚れのない色が好きだから」
「ふぅん」

パンツの色、について何気なしに話しているといつの間にか佐伯が、私の隣に座っていた。
ちなみにここは屋上で、貯水タンクの脇に腰掛けていた私のスカートが風でめくれて佐伯が見た、らしい。
今日はお気に入りの紫の下着。
ちなみに上下セット。

「それ上下セット?」
「うん、ブラも可愛いよ」
「へー」
「見たい?」
「んー、まぁ」
「佐伯って素直だね」
「そう?皆見たいとは思うだろうけど」
「違うよ、そうじゃない」
「ん?」
「見たいって、言えるのが素直だね」
「そう?」
「そう」
「ふふっ、ありがとうみょうじ」
「どういたしまして」

話の内容は置いといて、穏やかで綺麗な笑みを浮かべる佐伯につられて、私まで笑顔がこぼれた。
ふふふ、なんて柄にもなく笑っていると佐伯は先ほどより嬉しそうな笑みを零してやっと笑った、なんて言うから私は間抜けな顔をしてしまっただろう。
私、さっきまで笑ってなかった?と問いかければ笑顔のまま小さく頷いて、みょうじ、笑うには笑ってたけど、引きつってたとご指摘を受けてありゃ、とまたも間抜けな声が漏れてしまった。

「まじか」
「うん、まじ」
「そっかそっか」
「どうかしたの?」
「ん?いや、なんでもないよ」
「ふぅん…」
「…なに?」
「や、知りたいなぁって」
「知りたいの?」
「知りたいよ」

そう言ってふふふ、と笑う佐伯は先ほどとは打って変わったようにどこか黒いように思う。
だけど、それを言うと余計に黒くなりそうだから心にしまって、じゃあ、教えてあげる。と佐伯の唇に軽く指を当てて、できるだけ綺麗に笑えば吃驚したような顔をした後、艶やかに目を細めて、愛しそうに私を見つめた。
数秒して、やっとうん、と頷いた。
それを合図に私はゆっくりと口を開いた。
ぽつり、ぽつりとつながれる言葉。


「…って、こと」
「それは、災難だね」
「ふふ、そうでしょ?」
「だから元気なかったんだ」
「うん。でも、佐伯と話してると、元気出たよ」
「そう?」
「うん、ありがとう」
「どういたしまして、俺は何もしてないけどね」

そう言ってすっと目を細め、私の手を取り軽く握る。
それに応えるように目を弓なりにして、広角を上げれば、ぐ、と手を引かれた。
突然のことで、うまく反応できず体ごと佐伯にもたれこんだ。
途中、うわ、だとか、うお、だとか分からないけど、女の子らしからぬ声が出たことは確かである。

「…佐伯?」
「虎次郎、」
「え」
「虎次郎、俺は虎次郎だよ」
「…虎次郎」
「うん」
「こーちゃん」
「はは、こーちゃんか」
「うん、こーちゃん」
「…ねぇ、なまえ」
「ん?」

小首を傾げてゆっくりと続きを促すように問えば彼は今日一番の、柔らかく暖かい、太陽の様な、それでいて海の様な笑みを浮かべて私にこう告げた。

「付き合おっか、俺たち」

午後二時のふたりごと
(私たちだけのヒミツだよ)

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私の中のウニさん比率
ウニ8割、テニス2割。
こんな感じです。
タイトルは秘曲様より
一部変更 午前→午後

20120723
 

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