「なまえー…?」
「なぁに、どうしたの?」
「…好いとー」

むぎゅう、と言う効果音が付きそうなほどぎゅうぎゅうと私を抱きしめるこの巨人九州男児の名前は千歳千里、という。
髪の毛はふわふわで睫毛も長くてふさふさ。オマケにニキビ一つない艶々の肌。
それなのに190cmという身長に、加えて和やかなオーラと類まれなるテニスの才能。
天は二物を与えず、だなんて本当なんだろうか、と思わず疑いたくなってしまうような完璧さ。
まぁそれは、表向きだけの話だけれど。
本当の千歳千里という人物は、甘えたで抱きつき癖があって、二言目には「好いとう」という小悪魔である。
しかも本人が無意識というオプション付きだからよけいに性質が悪い。
いつもいつも驚かされ、恥ずかしい思いをさせられてはお得意の柔らかな笑顔で丸め込まれ、止めの一言、「好いとう」でいつもいつもノックアウトさせられるのだ。
腹立たしいと言えばそうなのだが、如何せん幸せや幸福感のほうが強いせいか、毎度許してしまう。
今度こそ、と意気込む割に私の意志は弱いらしい。
千歳限定で、と付け加えておくけれど。

「なまえ?」
「ん、何?」
「聞いてなかったんか…?」
「あ、ごめんね。ちょっと考え事してて」
「…許さん」
「え、」
「ちゅー、してくれるまで許さなかばい」
「ちょ、千歳っ…!」
「ほら、早よせんと…人ば来るっちゃ」
「っ、ちと「なまえ?」〜っ、」
「ん、…よくできました」
「馬鹿!阿呆!」

チロリと赤い舌を出して楽しげに笑う千歳の厚い胸板に真っ赤な顔を押し付けて馬鹿!と罵れば愉快そうに笑って私の頭を優しく撫でた。
そしてそのままむぞらしかね、なんて言って頭にキスを落とすから、それがまた恥ずかしくて。
さっきより更に真っ赤であろう顔を必死に押し付けて、隠して、小さく千歳の名を呼べば今度は耳まで真っ赤、と声を上げて笑った。
半分自棄になってそんな私が好きなくせに!と半ば叫ぶように言ってやれば千歳はキョトンとした顔の後柔らかく、大人っぽく微笑んで私を抱きしめて「そうばい、ね」と耳元で囁きそのまま私の真っ赤な耳に軽くキスをした。
恥ずかしさと幸福感とをそのままにありったけの力で千歳を抱きしめれば千年はクスクスと笑って腰を少し屈め、私と目線を合わせた。
訳が分からずぼんやりと千歳を眺めていると段々千歳の顔が近くなっ、って…あれ、本当に近い。え、あれ。唇になんか、え。

「…え、」
「…ちゅー、気持ちよかったと?」
「え、ちょっ、千歳!?」
「なまえの唇、柔らかかったばい」
「ち、ちちちと、」
「なまえ、好いとうとよ」

ショート寸前の私の頭を撫でてひょいと抱き上げた千歳はいつものような優しくて温かい笑みを浮かべていた。
もう考えるのが面倒で、あぁもういいやと頭の中で自己完結すれば意外と考えずにいられた。
そういえば今日私の誕生日だっけ、なんてことが頭を過ぎったけれど千歳が隣に居てくれるならそれでいいか、と思うとまた恥ずかしくて千歳の首に腕を絡めて顔を埋めれば少し上から楽しそうな笑い声が聞こえた。

今日の千歳、なんかいつもよりよく笑ってるなぁ。


貴方がいて。貴女がいて。

(ハッピーバースデーが聞けなくたって貴方が居ればそれでいいの。)

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うおおおおマリアンヌハピバ!!
お友達のマリアンヌがお誕生日と言うことで記念に書かせていただきました。
こんな千歳でいいのだろうか。
お誕生日おめでとう!
これからもよろしくお願いします!!!!!!
志隈より愛を込めて

タイトルは表裏一体様にお借りしました。
20120516
 

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