今日は誕生日やのに朝から厄日やった。
朝は寝坊するし何もないところで転ぶし、謙也はウザいし金ちゃんは騒がしいし千歳はサボるし。
それに弁当忘れるし、めっちゃ厳つい先生の授業に限って教科書忘れるし。
仕舞いには誕生日を祝っても貰えへんってなんやねん。
今もう放課後やで?部活も終わった…え、俺の誕生日忘れてへん?
そう考えると憂鬱で重たいため息がでた。
後ろから財前に部長なんか悩んではるんスか?なんて野暮なことを聞いてきたもんだ、と俺は思ったけどどうせ分からんのか、と今一度ため息をついて苦笑いを返せばいつもの不機嫌そうな顔でそのまま部室から出て行った。
ほんま、なんでやねんな…。

「ハァ…」
「あれ?蔵、どないしたん?」
「ん?あぁ…いや、なんでもないで。ははは、」
「なんもないことないやん!どしたん、ため息なんかついて」
「…今日な、何の日か分かる?」
「今日?…あっ、リンカーン大統領の暗殺事件があった日」
「はぁあ…」

なんでそんなエグイ話せなあかんねん…なんて思いつつなまえを見ればニコニコと笑って俺の腕を掴んできた。
は、と声を漏らす前に腕を引かれ立たされ、その勢いのままに部室から飛び出す。
ちょっと待て、と声を掛けるも俺の腕を掴む反対の手で自分のと、俺の鞄を持つなまえが笑顔で待たへーんと言ってスピードをあげるもんだから俺の脚は縺れて、なまえともども地面にこんにちわ。
痛い、と言いながらも未だ笑っているなまえの頭を軽く叩いて阿呆、と呆れた風に笑って言えば後ろから何してはるんスか、という聞きなれた後輩の声とおおおお前等何やってんねん!という焦ったような友人の声、その他にも同じテニス部の友人の声がたくさん。
ちなみに言えば今の体制派俺がなまえを押し倒してる、というか迫ってるような体制になっていて少し恥ずかしい。ような気もする。

「白石!お前道端で何やってんねん!」
「謙也、言うけど転んだだけや。お前が思うようなことはあらへん」
「なっ、ななな何やねん俺が思うようなことって!」
「謙也さんうるさいッスわ。ちゅーか、早よ行かんとあかんのやないんスか?なまえさん」
「あぁあ!ほんまや!ちょ、蔵はよ立って!行くで皆!」
「あ〜ん!焦るなまえちゃんも可愛えわぁ」
「浮気か小春!」
「蔵!はよ、立ってってば!」

促されるままに立ち上がれば再び腕を引かれ走り出す。
振り向けば後ろにはテニス部の皆がついてきてた。
あ、千歳がフラフラしとる。寝起きか?
それはそうと何処行くんや、と問えばなまえは、今度は振り返らずに嬉々とした声色で内緒!と言った。こっちまで楽しくなってくるような、そんな声に不思議がれども俺は脚を止めようとはせん。
やって、止まったらなまえがブー垂れるんが目に見えて分かるからな。
ふ、と笑って俺はなまえの隣で走るために足を速める。
なまえの隣に追いつけばなまえは横目で俺を見て、その目を弓なりにして綺麗に笑った。
暫くして漸く立ち止まったなまえを見る。
大丈夫か、と聞けば呼吸を整えつつ、これまた笑顔でうん!と元気よく頷いて建物もとい、なまえの家に入れてもらった。
中には、いつの間に俺等を追い越したんか金ちゃんやら財前やらがおって、俺は吃驚した。
ぼーっと突っ立ってる俺に気がついた健也が俺をお誕生日席に無理やり座らせて頭にへんな帽子をかぶせられる。
一体何なんや、と驚いている間に目の前にはケーキがあってもしかして、と思って周りを見渡せば色んな飾りがされてあり、忘れられてなかったんか、と嬉しく思った。
家主のなまえを見れば本当に、心底嬉しそうに笑っていまにも飛びつきたい、と言わんばかりに目を輝かせて蔵っ!と興奮気味に俺の名前を呼ぶ。
そういうことか、と小さく微笑んでなんや、と優しく聞き返せば待ってましたとばかりに俺に抱きついて誕生日おめでとう!と声高々に叫んだ。
それを合図に他の皆も声を揃えておめでとさん!と言って笑っている。
あの財前までも、やで。
俺の顔は多分、いつになく顔を緩ませた情けない顔をしとるんやろう。
せやけどもうええわ、と考えを放棄して感情のままに強く強くなまえを抱きしめてありがとう!と全身で伝えた。

「ほんま、おおきに!俺、今までの人生でいっちゃん嬉しいって思たわ」
「蔵リン!そんな大袈裟なこと言わんでええんよぉ!うちらがしたかったことやし!ねぇ〜なまえちゃん!」
「おん!うちがな!蔵の誕生日めーっちゃ豪華にお祝いしたいってな!言うたんよ!」
「あん時のなまえさん、小学生みたいやったわ」
「なまえん中身、まだ3歳やからしゃーないわ!」
「誰が3歳やねん!5歳じゃ!」
「変わらんっちゅー話や!」
「なぁ!ワイ、早よケーキ食べたいんやけど!」
「白石。火、はよ消さなかっち金ちゃんが騒ぐ、はよ消してから」
「白石ぃー!早く!」
「はははっ!ほんまおおきにな!ほな、消そか」

ふぅ、と火を吹き消せばより一層金ちゃんは騒ぎ立ててなまえにケーキを切ってとせがんでいた。
その姿を見たユウジが「玩具買ってもらおうと必死な幼稚園児みたいやな」と言ったことによりドッと笑いがおこり、そこから更に煩くなった。
けど、俺はそんな環境が大好きで、なにより大切で、守りたいと思った。
特になまえは小学校の時からずっと支えて貰ってて、頼りになって、そして誰よりも優しい奴やと思った。
今一度、実感したこの幸せや仲間の大切さを心に刻み込んでこれを企画してくれたなまえの頭をぐしゃぐしゃと撫でればいつもの、俺の大好きな笑顔で今日一番の幸せをくれた。


「蔵っ!生まれてきてくれてありがとう!めっちゃ好き!大好きやで!」


ほんまに、俺、なまえに出会えてよかったわ。
これからもよろしゅう頼むで。


Happy Birth Day

(生まれてきてくれてありがとう!愛してるよ蔵ノ介!)

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白石ハピバ!生まれてきてくれてありがとう!
四天のまとめ役でありおかんであり聖書な白石くんが大好きです!
これからも好きだ!
ちなみに我が母の誕生日でもあります。
ありがとうママン!

10414 白石ハピバ
 

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