「…ねぇ、ブン太ー」 「あ?なんだよ」 「好きじゃないから別れるって意味分かんないよねー」 「…」 「じゃあなんて付き合ったんだよってゆーかさー」 「あー…そん時は好きだったんじゃねぇ?」
言葉を濁すように、けれどハッキリと私の質問に答えてくれるブン太に少しばかり感謝しつつ、私は空を仰ぎ見る。 雲ひとつない晴天。こんな日にお昼寝するのは気持ちいいだろうな、とか考えつつ寝転んで、隣に座るブン太に再び声を掛ける。 ブン太は何も言わなかったけれど、私と同じように寝転んで空を見てた。 あ、あの入道雲の中天空の城あるって。
「私さー腹立ってんだ」 「見りゃ分かるっつの」 「なんであの子が泣かなきゃなんないの?」 「知んねーよ、馬鹿」 「ブン太の方が馬鹿っしょ…」 「うるっせーよ馬鹿。…まぁ、アレだ」 「うるさい豚…何さね」 「そーいう運命なんだよ」 「…わっけわかんねー」
そういってへらりへらりと笑っていればブン太は行き成り真剣な目で私を見る。 寝転んだ体制から起き上がり、覆いかぶさるように私の上へ。 少し悲しげな表情に何故か心が痛んだ。 どうかしましたか、と仰々しく聞いてみれば今度は苦しそうな顔をして私のほうにへたり込んで来た。 重たい、と言いつつも退けない私は優しいな、なんて思ってちょっと自己嫌悪。 私はやっぱり優しくなんかない。
「…友達のことでよ、」 「うん、」 「そこまで言えるのって、凄いなお前」 「そうでもないよ」 「や、凄ェよ。俺、仁王がお前の友達と同じことされてても何も思わねぇし」 「そりゃ仁王だからじゃない?」 「…まぁ、それもある。」 「でしょ。だから私は凄くない」 「いや…でも、俺は尊敬する」
そう言ってブン太は私の耳元で小さく笑った。 ゆっくりと体を起こして私の顔を覗き込むブン太の鼻をえい、とつまんでやれば少しばかり驚いたような表情をした後に、いつものように笑った。 ありがとう、と小さく呟いて私体を起こす。 伸びをして、欠伸をして…ふふふ、と笑えばブン太も笑っていた。 隣に座るブン太の肩に寄りかかって景色を一望する。 グラウンドから聞こえる元気な笑い声やちょっとした叫び声なんかを耳にしつつ静かに目を閉じる。 ブン太に触れている肩から、腕から伝わってくる心地好い温度にさっきまでの苛立ちは遥か彼方へと飛んでいった。 そうしていると不意に唇に熱が当たった。 吃驚して目を開ければ目の前にはブン太の顔があって、思わず後ずさりしてしまった。
「なっ、ブン太…」 「…真っ赤」 「う、うるさい!ていうか、何したの…」 「は?何って…ちゅー」 「キモッ!」 「うるっせーよ!」 「え、でも待って。ちゅーって、き、キス…?」 「正解」 「うわああああブン太の馬鹿あああああ!!!」 「うっせー」
さすれば君は僕の物
(どうせ好きなんだから別にいいだろ?)
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