ドクン、ドクン。
疎ましくも感じる自分の心音を聞きつつ目を閉じる。 妙な違和感を感じつつゆっくりと深呼吸を繰り返す。 ふむ、やはり不快だ。 そう考えてしまうのはやはり心音が邪魔だと感じているからだろう。ああなんて煩わしいことか。 でもだからと言って好きで生きている訳でない、という馬鹿げた無責任な発言はしない。 むしろ私は生きたいと願う。 しかし、時には情緒不安定になり死にたいと考えるのだ。厄介なものである。 夜中になると自分を見失う。一体私は誰なのだ。私は何故いるのか、必要なのか。 答えは言うまでもないのだが、分かっているのだがやはり誰かの口から聞きたい。 意図せず溢した言葉が私に関してのことであって欲しいと、無謀にも考える私はお察しの通り馬鹿なのである。 と、上記の言葉をそのまま、私の前に座る幸村くんに述べれば彼は微笑んでこう言った。
「そんなこと知らないよ」
予想はしていたがそれを言われると少しばかり心が痛い。 まぁ幸村くんだからしょうがないと頭の中で処理して続きを待つ。 すると再びゆっくりと口が開き今度は嘲笑うかのような表情で私を見る
「そんなこと、俺に話してどうしたいの?何て言われたいの?"君は必要だよ"?言うはず無いだろう。必要か必要でないかなんて君はもう分かってる筈だからね。じゃあ何故言わせたいか、答えは簡単だね」
「君が自分を信じていないからだ。」
自分を信じていない? 一体どういうことだと首を傾げれば彼は目を細めてさも可笑しそうに笑いポツリと呟いた。
「君は本当に馬鹿だね」 「……」 「いいかい?答えが分かっているのに他人に言わせたがるのは自分の答えが間違っていないか…答えあわせをしたいからだよ」 「答えあわせ?」 「そうだよ。答えが間違っていれば点数は貰えない。…つまり」 「答えが間違っていれば必要とされていない、」 「そうさ。これでもう答えは分かっただろ?」 「…必要、」
私が呟いたと同時に幸村くんは私の腕を引き抱き締めた。 幸村くんの背中に腕を回して肩に額を乗せる。 すぅ、と息を吸えば幸村くんの匂いがした。 はぁ、と息を吐けば幸村くんは私を離し、お互いの顔がしっかり見えるようにして笑顔で私の欲しい言葉を発した。
「君が必要だよ、なまえ」
酷く狼狽した私を今一度抱きしめ、幸村くんは甘い声と笑顔で私を翻弄するのだ。
言葉
(君を必要としなかったことなんてないさ)
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