強引な君 | ナノ



「淀橋!」
「みょうじ、」

ヒラリとスカートを靡かせながら大きく手を振るみょうじは生まれた時から、正確には生まれる前からずっと一緒であった。
故に隣にいることが普通であったし、それが当たり前だった。
学校に入ってからもクラスが離れたこともなく、親も仲が良いし家も隣であったので一緒に帰っていた。ちなみに先ほど上げた生まれる前から、という表現も親同士の仲の良さ故である。
妊婦二人と旦那二人でよく出掛けたそうだ。父さん達は気が気でなかったらしいが。
暗くなくとも女を一人で帰らせるのは良くないと僕の母は言う。確かにそうだと頷く。
この近隣も決して治安が良いとは言えないのだから。

「淀橋、今年もよろしくね」
「ふん、僕とよろしくするつもりか?」
「勿論」

さも当たり前と言うようににこりと人のいい笑みを浮かべるみょうじのことが、僕は嫌いである。
友人からも教師からも好かれる、そんな誰からも愛されるみょうじのことが気に食わなかった。
昔ならば僕も今と違い純粋に彼女を心から好いて、自慢の親友だと胸を張っていた。
しかし僕らも成長するにつれ、妬み僻みという感情が大きく膨れ上がり、ついには彼女を嫌悪の対象にまで伸しあげていたのである。
周りから好かれるみょうじに対して、僕はどうだ。
口ばかり達者になった子供じゃないか。
ギリ、と奥歯を噛み締めて少し俯いていれば教室の入口でキョトンとした顔をした彼女は小首を傾げてポツリとつぶやいた。

「私の席ってどこだっけ…」

お前の席はいつも僕の隣じゃないか。
さらに強く奥歯を噛み締めて荒々しく彼女の腕を掴んだ。
ズンズンと足早に席に向かう。
着いたところで隣の席に座って僕は吐き捨てるように、告げた。

「…お前の席はいつも僕の隣だろう、馬鹿め。」

すると彼女はガタガタと椅子を引いて席に着いた。
しかし視線はこちらを向いているのか、ひしひしと身に刺さる。
なんだ、と睨みつけるように見やれば笑顔で僕に返すのだ。

「ありがと、貞夫」

これだから僕は君を妬むのだ。




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -