拝啓、愛しい人 | ナノ

美しい


!学パロ ギャグっぽい

「エースくん、なんか今日はテンションが高いね」

 朝一番、学校に来て隣席の奴に言われたのがそれだ。正直訳分からんと思った。その時の俺はテンションが高いというより朝からルフィに朝飯を食われたことで少しばかり苛立ってたと思う。
突然テンションが高いだのと言われた俺は当然訳が分からなくて(これさっきも言った)無視して教科書やらなんやらを机の中に仕舞って行った。
アレ?なんて間抜けな声が隣から聞こえた気がするが今はそれどころじゃねぇ。
何せ遅刻ギリギリでやってきたと思えば抜き打ち風紀検査で引っかかるわ購買に行けないわお腹空いたやらでイライラしてんだ。

「エースくん、おはよう」
「…はよ」
「あの、ごめんさっきの言い間違えた。テンション高いじゃなくて、イライラしてるね」
「どんな間違いだよ馬鹿」
「なんかちょっと似てるじゃん、怒って気が昂ぶってる的な、ほら」
「何がほらだよ」
「…あ、飴あげるからごめん許して」
「全部寄越せ」
「えっ、これさっき買ったばっかりなのに」
「駄目なの?」
「駄目じゃないです…」

 しょんぼりと眉を下げて飴の袋を差し出す華子に何も言わず受け取って袋から取り出した飴をガリガリ噛み砕けばショックを受けた顔で華子は固まった。飴の食い方くらい好きにさせろよ。ってか華子の飴引ったくって食ってんだもんな…あっいや今のはダジャレじゃねぇよ。
 ふつふつと罪悪感が沸いてきてSHRの途中にちらりと華子を盗み見れば肩を落として財布を開いてた。お前飴に対するショックじゃなくて金に対するショックかよ。
俺は呆れて溜息を漏らせば鋭い視線が突き刺さる。

「なんだよ」
「エースくん酷い、今月ピンチなのに」
「知るかバーカ」
「酷い…!私がどれだけひもじい生活してるか知らないから言えるんだ!」
「どんな生活してんだよ」
「アパート一人暮らしで今晩の夕食はその飴の筈でした」
「ダウト」
「ダウトじゃねーよ馬鹿!本当だよ!今親が出張行ってていないんだよ…食費送って来ないから自分で稼いでるのに、なのに…」
「分かった分かった」
「…っ、う、エースぐん、酷いぃい……」

 うわぁぁあんと大声で泣き始めた華子にギョッとした。まさか華子がこんな大声で泣き始めるだなんて思ってもみなかったからだ。
わんわんと泣く華子を心配して逆隣のマルコも驚いた顔をしながら華子にどうしたのか聞いている。
 つーか次の授業なんだっけ…あっ、クロコダイルの授業じゃねぇか。
ヤバイ、クロコダイルの野郎が来るまでになんとかしねぇと。あいつ何かと華子に構ってるからな。お気に入りなんだろ。
 あわあわと手を振りおい泣きやめよと背中を摩るとえぐえぐと声を漏らしながらも少しは落ち着いた。
悪かったよ、と謝って飴を返し頭を撫でるとうううと呻きながら俺の腕に張り付いてきた。何なんだこいつは。

「エースく、もうやだぁ…っ!お母さんのご飯、食べたっ…う、えええ」
「お、おい泣くなよ…母ちゃんきっと帰ってくるって」
「帰ってくるのは分かってるよおお…でもさみしいよおおおお」
「うわやめろおい涙つけんな!」
「ああああ!エースくんが酷いよおおお」
「おいエース、お前なにしたんだよい!」
「俺は何にもしてねーよ!」
「なんで華子が泣いてんのよ!ちょっと!」
「華子〜〜〜〜〜〜!!俺もざみじい〜〜〜!!!」
「なんでお前も泣いてんだよルフィ!てかなんでここいんだよ!」
「うわああああん!!ワニちゃぁぁあん!!」
「おい…うるせェぞ華子」
「なに、あいつクロコダイルの何なんだ。ワニちゃんって…ワニちゃんって!!」
「従兄弟らしいよい」
「あっ、なーるほど」

 ピイピイ泣く華子をクロコダイルが回収していった。うぇぇぇぇと泣き喚く泣き方はすんげぇ汚いけど割と泣き顔は綺麗だったのが頭に焼き付いて離れねぇ。畜生華子のくせに生意気じゃねぇか。
ていうかどうすんだよこの飴、食っていいのか。
ガリガリ飴を噛み砕きながらどうせ自習になるこの時間何をしようか考える。今はゲームする気分じゃねぇしだからと言って勉強する気は更々ない。
そうだこの飴の包み紙綺麗だからテープで貼っ付けてあの馬鹿にあげよう。
そうと決まればまずは飴を全部食うしかねぇな。

「うわぁぁあん、エースくんに晩御飯とられたぁあ!!」

 そうだこれ華子の晩飯なんだった。やべぇ、全部食っちまった。どうすっかなり

「エース、華子がエースくんエースくんって泣いてるよい」
「あ、ああ〜〜………そういう風に言われるとちょっと興奮してきた」
「興奮してきたじゃねぇよい馬鹿末っ子死ね」
「やめろマルコ!クロコダイルにだけはチクるんじゃねぇ!!」
「しっかり躾けてもらいなねい」
「おいテメェポートガス、華子を卑猥な目で見んのはお前だな…?」
「ちがっ、ギャァァアアア!!!」

 それでも彼女の泣き顔にムラっとしたのは事実です。


或る美しい朝に関して
(疚しい恋(春)の訪れ)

140315


[ 3/3 ]

[prev] [next]
[栞を挟む]
back




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -