拝啓、愛しい人 | ナノ

恋した


!学パロ

 太陽に照らされてキラキラと光る髪の毛を前に見ながらぼんやりとイルカ先生の話に耳を傾ける。問10の文章問題を解いてみなさいと言われたのがつい10分前の事だ。
今は答え合わせとして模範解答を黒板に書き写し説明するイルカ先生はあーだこーだと身振り手振り、身体を使って表現しつつ生徒を当てて答えはどうなるかと問う。答えられた生徒は先生の笑顔と褒め言葉を有難く頂戴して着席した。

「で、だ…おい、華子!」
「はぁい」
「答えはどうなる?」
「あー…えっと、27です」
「正解だ!でもちゃんと先生の話も聞いていような?」

 眉尻と目尻を器用に下げてくすりと微笑むイルカ先生に私も小さな笑みを返して着席する。正解しててよかったと息をついて顔を上げるとキラキラの髪の毛では無く真っ青な目がこっちを向いていた。

「…なあに」
「華子ちゃんってば、頭良いんだな」
「そうでもないよ。今回は偶然分かっただけだから」
「んなことねーってばよ」
「ほら、前向いて無いとイルカ先生に怒られちゃうよ」
「あっ、そうだったってば」
「後2分もすれば授業終わるから」
「んじゃあ、次の休み時間は俺とお話だってば」
「うん、分かった」

 ふんわりと笑って前を向いたナルトくん。彼は何故か人から疎まれているが、実際なんてことないただの少年に過ぎない。
人より少しマイペースでポジティブで、たまぁに人の話を聞かないで猛進してしてしまうけれど根は優しくて本当にいい子。
私みたいな子供が何を言ってるんだって思うかもしれないけれど、同世代の皆と比べると落ち着いていて思慮深いってお父さんが言ってたから、多分大丈夫だと思う。何がって聞かれるとまだうまく説明出来ないけれど、きっと大丈夫。だって些細な事だから。
 キーンコーンカーンコーンというチャイムの音と共に各々好きなことを始める。早弁する人もいれば購買にパンや飲み物を買いに行く人もいる。イヤホンと音楽プレーヤーを取り出して自分の世界に没頭する人もいる。
コンコンと机を爪先で鳴らされて前を向けば金色の髪を光らせて蒼い目を優しく細めるナルトくんが私を見てお話しようと言う。
一つ頷いてなぁにと聞けばナルトくんはこの席が暖かくてとても眠たくなると言った。それには私も大賛成なためまたこくりと頷いて私も、と言うとナルトくんはふにゃりと笑って一緒だという。

「お揃いだね」
「ん、もう凄い眠たくて、気付いたら寝てる時もあるってば」
「たまに首がカクカク動いてるのはそのせいかぁ」
「わ、バレたってば」
「ふふ、そうかなぁって思ってたんだ」
「でも、華子ちゃんもたまにプリント回すのに後ろ向いたら寝てるってば」
「あはは、恥ずかしいな」
「一緒だってばよ、お揃い」
「なんだか変なお揃いだね」
「嫌ってば?」
「ううん、面白くって素敵」

 くすくすとナルトくんと笑い合っているといつの間にか時間が経って居たようで再びチャイムが鳴った。
またお話しようねとナルトくんに言うと今日一番の優しい笑顔でうん、と頷いた。

 授業が始まってもう30分。先生が黒板に板書してる隙にくるりと振り向いたナルトくんがはにかんで机の隅に小さな四つ折りの手紙を置いた。
静かに手紙を開いて中を読んだ瞬間私の心臓はドクリと跳ねた。

「っな、」
「ん?なんだ山田、どうした?」
「あ、いやっ…えと、大丈夫です」
「そうか?具合が悪かったら直ぐに言うんだぞー」
「はい、ありがとうございます」

 ぺこりと頭を下げて俯く。前の席でひひひと笑う声が聞こえたので仕返しにナルトくんの背骨を指でなぞればナルトくんは変な声を上げて先生に怒られてしまった。私は悪くないもん。

「ナルトくん、これ本当?」
「ん…ほんとだってば」
「…あのねナルトくん」
「なぁに、華子ちゃん」
「今日、お昼ご飯一緒に食べよっか」
「…うん、食べる」
「コラ!ナルト!ちゃんと話を聞いてろ!」
「っはーい!ゴメンナサイってば!」

 勢いよく謝るナルトくんを見てひっそりと笑う。ナルトくんはへへへと笑って誤魔化しているけど、私には恥ずかしいのがお見通しでなんだか可笑しかった。
それからずっと先生のうんちくを聞いている内に少しずつ眠たくなってきたので瞬きを数回繰り返して前の席のナルトくんの綺麗な髪の毛を見つめる。
太陽に照らされて光り輝く黄金の髪の毛が眩しくてうっとりと目蓋を落とすと次第に周囲の音は遠くなって行く。
窓の外から聞こえる車の音と電車の音、それから風の音を遠くで聞きながら春の陽気に当てられて私は夢の世界へと旅立った。
嗚呼、これもまた青春なり。


恋したあなたとわたしの始まり
(恋と春との訪れ)

140315


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