生誕

おぎゃあ、おぎゃあ。

泣いている。赤ちゃんが泣いている。
泣いているのはどんな子?男の子かしら?女の子かしら?
泣いているのは、誰?

*
「おめでとうございます、元気な女の子ですよ」
「よ、良かった…っ!」
そんな歓喜の声を聞きながら私は産声をあげる。
何がなんなのか、さっぱり分からない。怖い、私は一体、何なのだろうか。
恐怖に耐え切れなくなり私は叫んだ。
しかし、口からでるのはハッキリした言葉ではなくただの音であった。

「よかったっ、良かった…っ!頑張ったね、なまえ…生まれてきてくれて、あっ、ありがとう…っ、うぅ、」
「生まれたあああああ!なまえ!なまえ!父さんだぞ!」
「お、お兄ちゃんだぞ!!」

心底嬉しそうな、興奮気味の声につられて私は声をあげる。
しかしながらさっきとは違い、私は安心していた。
あぁ、この優しそうな人たちが私の家族になるのか、と。
暖かな大きな手に抱かれ、私はゆっくりと意識を飛ばした。



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