あいつの笑顔を見ると顔がカッと熱くなる。胸がドキドキしてうまく息ができない。
話しかけられたもんならちゃんとした言葉なんて口からで無くて、情けなくも出てくるのはあ、とかう、とかだったり、単語だけだったりして。本当に恥ずかしい。
だけど俺はこの病気の名前を知らない。
そういやこの前ナースのジェシカに聞いたらアイツは微笑んでもうすぐ分かるだろうと言った。
待てど暮らせど分からない答えに頭を捻りながらアイツのことを思い出す。
例えば今日はなんだかご機嫌だったとか、緩く巻かれた髪がとても似合っていたとか、ナチュラルメイクでも十二分に可愛いとか、薄いピンクのマニキュアが白い手に良く映えたとか。ああ、後はそう、今日も笑顔がとびきり可愛かった。


この病気の名前が分からないとマルコに聞けばマルコは薄く笑って優しい眼差しを俺に向けた。
何笑ってんだとぶすくれた顔で言えばマルコは俺の頭をくしゃりと撫でて「そいつぁ、恋の病だ」と言って不敵に口角をあげた。
それはまるで敵船と戦ってる時みてぇな内なる炎を目に宿したような笑みだった。
恋の病、恋の病。
口に出して確認してみると何とも面白可笑しくて、そして何より心が擽ったくて笑ってしまった。
そんな俺を見て満足そうに笑んだマルコはいつの間にか俺の前からいなくなっていた。
ひとしきり笑った後、腹が減って食堂に行けばイゾウやビスタと楽しげに話してるアイツの姿が見えたから後ろから近づいて肩を抱き寄せ高らかと宣言した。


「悪いがコイツは今から俺のモンだ!コイツに手ェ出すんじゃねぇぞ!」


シンと静まり返った食堂は、一瞬にして息を吹き返した。
顔を真っ赤にして俯いてる名前の顎をくっと持ち上げて目線を交える。
オロオロと右へ左へと目線を彷徨わせる名前に俺を見ろと告げればおずおずと上目遣いで俺を見つめる。
ニヤリと口許を歪めて触れるだけのキスをしてお前が好きだと告げれば口許を抑えて目を見開いて、イマイチ現状を把握しきれていない名前の身体を引き寄せてぎゅうぎゅうと抱き締めれば耳まで真っ赤にした名前は蚊の泣くような小さな震えた声で私もと言ったからもう一度キスをしてやれば今度は涙を流して破顔した。
ああもう、大好きだ。


誰よりも大きな声で


愛を叫んでやろう。




タイトルは舌様より
120513
 

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