ドンチャン騒ぎとはまさにこのことだろう。酒を浴びるように飲み、飯をたらふく食べては大口を開けて笑い転げ中には踊り出す奴もいれば歌い始める奴もいる。
総じて馬鹿だ馬鹿だとしか言いようが無いがそれもしょうがないのだろうと思う。
 なにせ今日は1月1日。2番隊隊長こと、エース隊長の誕生日であるからそうなるのも頷ける。
 余談だがワノクニでは”元旦”と言い、一年の始まりを表す日でもあるのだとイゾウさんから聞いた。

 エース隊長は人懐こく元気で快活な性格をしている。その上美青年ときているのだから女の人も放って置かない。
一度街へ出ればやれ美女や、やれ老婆や、やれ海軍やと追いかけ回されて楽しそうに笑っている。(海賊であるから海軍から敵視されているがエース隊長は全く気に掛けていない様子だ)
老若男女問わず人から愛されるエース隊長はまるで太陽のように明るい笑顔でみんなを受け入れる。頭の方は少しお粗末だけれどそれも愛嬌。持ち前の明るさで笑い飛ばし人々を笑顔にするのだから、本当に凄い人だと思う。
 しかしそんなエース隊長も戦闘となると一風変わった雰囲気を纏い余裕綽々といった顔付きで相手に挑む。敵を翻弄し焼き払い薙ぎ倒してゆく姿はまさに勇猛果敢と言えるだろう。
そんな強く逞しい、素敵な人の誕生日なのだから、ドンチャン騒ぎになるのも頷けるというわけだ。

「おー、名前!飲んでるか?」
「エースさん。飲んでますよ、あまり強いお酒は飲めませんが…」
「ンなの別にいいんだよ!お前がちゃんと飲んでりゃあそれでいい!」
「なら平気ですよ。エースさんは…やっぱりよく食べますね」
「そうかァ?」
「はい。でも、サッチ隊長のご飯、美味しいですから」
「なァにー?俺の話ィ?」

 ジョッキ一杯のビールをグッと飲みながらやって来たサッチさんが私の肩に腕を回す。恥ずかしいし重たいのでやめて欲しいけれど口にすることはなくグラスの中に消えた。
エースさんはちょっとだけむっとした顔になってサッチ隊長のリーゼントをぐっしゃぐしゃにし始めた。

「あ、ぁああ…エース隊長それ以上はやめた方が、」
「あっはっはっ!!エース、お前嫉妬してんのかァ?」
「っちげぇよ!!」
「あ、あれ…サッチ隊長怒ってないんです…?」
「名前と肩組んだからって嫉妬してんじゃねーよバーカ!誰もお前のモン盗りゃしねぇよ!!」
「うっせーよバカサッチ!要らんこと言ってんじゃねーよ!」
「エース隊長?サッチ隊長?」

 コイツ等何の話をしているんだと首を傾げて二人の名前を呼ぶも楽しそうに取っ組み合いをし始める始末。訳が分からない!と頭を抱えながら二人にやめましょうよ、と制止の声を掛けていると後ろから名前を呼ばれ振り返る。
 マルコさんとイゾウさんが度数の低い私用のお酒の一升瓶を軽く振りながらニンマリと笑っていた。目を丸くして瞬きをしているとマルコ隊長に手を引かれる。要は一緒に酒を酌み交わそうという事らしい。

 イゾウさんの隣に腰を落としてイゾウさんにお酌をしていただく。申し訳なくて私もイゾウさんにお酌をするとマルコさんもしてほしいと言うので喜んでお酌をする。
3人で小さな円になって真ん中にお酒とおつまみ。騒がしい周りと少し違う穏やかな雰囲気がとても心地よかった。
このお二方は個人的にとても頼りになると思っている。勿論他の隊長さんも頼りになるが、ここ一番という時にはこのお二方の方が頼りになるのだ。
マルコさんは1番隊の隊長で、イゾウさんは16番隊の隊長である。昔から両端の隊の隊長さんというものは頼りがいのある方なのだろうか。新人の私には分からないけれどそんな気がしてならない。もう一度言うが他の隊長さん方も頼りになるが更に頼りになるのがこの二人というだけである。

「お前もエースに懐かれて大変だなァ」
「懐かれているんですか?私が?」
「あァ…やっぱり気付いてなかったのかい」
「女の新人だから物珍しいんでは…?」
「それもマァ、無くもねぇよい。けどアイツはそれだけじゃねぇよい」
「っく、はは!エースなァ…アイツ見てっと飽きねぇな」
「全くだ。アイツは幾つになっても成長しねぇ、あのままだよい」
「…素敵な人ですよね、エース隊長。」
「そう思うかい?」
「はい、凄く。羨ましくも思います。けれどやはり、尊敬の念が強くて…憧れ、です。」
「憧れねェ…良いのか悪いのか、無関心よりゃマシだな」
「ふ、ははっ!言えてらァ!」
「?何のお話でしょうか…?」
「いや、お前は…名前はまだ知らなくていい話だ」

 ポンポンと頭に乗せられた手が優しく髪を撫でる。イゾウさんの手つきは酷く優しくて嬉しかった。マルコさんも優しい顔をしている。
思わずふふふ、と笑ってしまうとイゾウさんもマルコさんも少し驚いた顔をしてニンマリと海賊の顔をする。
私も二人の真似をして海賊の顔をしてひひひと笑った。

「おっ、ありゃあエースか」
「なんだ、サッチとの取っ組み合いは終わったのかい」
「みてぇだぞ。キョロキョロしてやがる…ははっ、気付いてねぇな」
「馬鹿だからしょうがねーよい。それより名前、酒」
「あ、はい。今日はお酒が進みますね、お二人とも」
「可愛い妹に酌してもらってんだ、当たり前だろ?」
「イゾウの言うとうりだよい。お前も呑みな」
「アッいた!名前なにしてんだよ!」

 イゾウさんとマルコさんにお酌をしてから振り返る。首に回った腕が少し苦しくて背中にあたる熱が少し恥ずかしい。
エース隊長は唇を尖らせてぶうぶう文句を垂れている。どうすればいいか分からなくてエース隊長の腕をそっと掴んで小さく笑うとエース隊長は少しだけ赤い顔で優しく笑って俺にもお酌して、と私の飲み干していたグラスを取り差し出す。

「主役がこんなところにいてもよろしいのですか?」
「いいんだよ、誕生日に託けて飲みてェ奴ばっかりなんだからな。親父だってそうだぜ?」
「エースの言うとうりだよい。誰もコイツの誕生日なんか祝っちゃいねぇ」
「ヒデェー!!けど間違ってねぇしな。ナース位だろ?」
「ナースですら祝っちゃいねぇよ、馬鹿」
「弟が祝ってくれるから構いやしねぇよ。お、サンキュ」
「マルコさんも、イゾウさんも祝ってあげましょうよ。一年に一度の誕生日なんですから」
「可愛い妹に言われちゃしょうがねぇな」
「そうだない、イゾウ」
「もう、お二人とも冗談が過ぎますよ!」

 ケラケラ笑う二人をそのままにエース隊長の方に顔を向ける。楽しそうに笑うエース隊長の腕にそっと触れてこっちを見るエース隊長と目を合わせる。真っ直ぐな目は私の心の底まで見据えていそうで少しだけ怖い。けれどエース隊長はそんな様子を一切見せずにふにゃりと笑う。

「え、エースさん、お誕生日おめでとう。産まれてきてくれて、ありがとう。エースさんは、私の憧れです。ずっと見てます、から」

 隊長、からさん付けに変えてまごつきながらもエース隊長に祝いの言葉を告げるとエースさんは目を見開いて、それから恥ずかしそうに笑ってありがとうと言い床に置いていた手にそっと手を重ねた。
 前を向いてイゾウさんとマルコさんと話して笑うエース隊長がいつもより輝いて見える。そんなエースさんの唇に触れたいと、思ってしまう。
どうやら私の頭と目はお酒によってやられてしまったようだ。



Happy Birth Day ACE!!!!
一日遅れだけど誕生日おめでとう!大好き!
140102

 

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