「お願いっ、悠一郎…!」

 カキンッ、と音が鳴り球が空の向こうへと高く飛んでゆく。
少しずつ歪む視界もそのままに立ち上がると悠一郎がグラウンドを駆け、ホームに帰った所で私に向かって右手を上げていつもの快活な笑顔を見せた。
次の瞬間、わっと沸騰したみたいな歓声の中試合終了のブザーが鳴る。
泣きながら頭を下げる相手の人達も、嬉しさで涙を流す私達の仲間もどちらも眩しくて私は思わず目を細めて感動と喜びに打ち震え観覧席でへたり込んでしまった。
大丈夫かと泣きながら笑顔で心配してくる友達にありがとう、大丈夫と伝えて観覧席を立つ。
外に出てもまだ興奮は冷めず一人で泣いていると周りが騒がしくなった。
元よりワイワイと騒がしかったのが、ギャアギャアと騒ぎまるで動物園のようである。
何事かと顔をあげると騒ぎの中心人物であり私の恋人でもあり、そして今回の最優秀選手、田島悠一郎が私を見つめ穏やかに微笑んでいた。
堪らずに抱きつけば大きな手のひらで頭を撫で、そしてその逞しい腕で私を支え、いつの間にか大きくなった身体全てを使って私を包み込んでくれる。

「ゆ、いちろ…っ!」
「名前、泣きすぎ」
「だ、って…ゆうい、ちろ…っ!もうっ!」
「はは!ごめんごめん、ありがとな」
「悠…っ、お、めでとぉ…!!」
「うん、ありがとう」
「すっご、かっこよか…っぅ、ふ…」
「うん、名前が居てくれたおかげ」
「も、ズルい…ゆ、ういちろ、大好き…ありがとう…っぅ、え」
「俺も好き、大好き!」

 大号泣している私を軽々と抱き上げて所謂、お姫様だっこをする悠一郎の首に腕を回して頬にキスを送れば本当に幸せそうな顔をするので私まで笑ってしまった。
後からやってきた悠一郎のチームメイトのみんなが私達を見て笑ったりしているのを見てもう一回、今度は唇にキスをすると悠一郎は蕩けた顔をしてすっげー幸せ!と無邪気な子供のように言う。
嬉しくて幸せで、悠一郎に抱かれたままチームメイト一人一人の名前を呼んでありがとうと伝えると皆も優しく笑ってくれた。

「みんなありがとう、凄くかっこよかった…大好き!」
「あっ、名前浮気すんなよ!」
「馬鹿田島!雰囲気壊すなってーの!」
「だって俺も名前に好きって言われてーもん!俺の名前なのに!」
「優勝したってーのになーんも変わりゃしねぇなお前は…」
「まぁ、それが田島だもんねぇ」
「西広見て、あの名前の顔」
「うん、ふふ…凄い嬉しそうだね」
「おい田島!名前のこと幸せにすんだぞ!」
「あったりまえー!!俺が名前のこと世界一幸せにすんだ!」
「〜っ!悠一郎…っ、もう大好き愛してる…!!」
「あー!また名前泣いた!もー折角名前の為にホームラン打ったっつーのに泣くなよ、な?」
「た、田島くん、がっ…名前ちゃん、泣かせた…!」
「田島ぁぁあ!!名前泣かせんなっつっただろーが!」
「嬉し泣きならいーの!なぁー名前?」
「も、みんな大好き!大好き大好き大好き!!」
「ははっ、俺も大好きー!!」

 ケラケラと笑って私を抱いたまま走ってみんなの所へ走る悠一郎にしっかりと引っ付いて耳元で小さく囁いた。

「悠一郎と出逢えて、良かった」


キスミー、最愛の人

「俺も、お前に逢えて良かった」



タイトルは秘曲様、いつまでも初恋より。
田島くん本当かっこいいですよね。
夏になるとおお振り熱がぶり返します。
今冬ですけれど。
131217
 

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