いつもは気障ったらしい台詞を吐く口も今は真一文字に閉じられていてぐりぐりとわたしの首筋に顔を埋めて擦り付けてくる。
 いつもは緩く細められて弧を描く綺麗な目も今はすうっと細められて扇情的な色を孕みながらも確かに寂しさを漂わせている。
 いつもと違う、プロシュート。
痛いくらい強く抱き締めて存在を確かめるように其処彼処に唇を這わすプロシュートの顔は悲しげで不安気で苦し気で。それでいて美しかった。

「プロシュート」
「ん、」

 囁く様に名前を呼んでやれば小さく反応してそっと顔を離した。
ぎりぎりと押し潰す腕の力は相変わらず私を締め上げている。
 どうしたの、なんて野暮ったいことは聞かない。
彼はそれを望まないし、私だって望まない。聞いた所で何ができるというわけでも無いのだから。
だから代わりに、彼の名前を優しく丁寧に、愛を込めて囁いて、されるがままにキスを受け入れるのだ。
それが良かったのか少しずつ安堵した表情へと変わり行く彼の顔を見て口許に笑みを称えて見せた。
目、鼻、顎、頬、耳、額、首、手、指、腕、肘、二の腕、肩、鎖骨。
そして唇。
 ちゅ、ちゅ、と可愛らしい音を立てて唇を這わせキスをする彼の頭を撫でれ ば嬉しそうに顔を緩めて口吸いをしてくるプロシュートははっきりいって可愛い。
こんなプロシュートの姿を見れるのは私だけだと思うとより一層喜びが込み上げてくる。
 あぁ、なんて愛しいのだろう。
後頭部にそっと手を回して綺麗に結われた髪のゴムを外す。
ぱさりと落ちた髪の毛に少しばかり驚いた顔をしたプロシュートは私の顔と手を交互に見つめてはにかむ様に優しく笑んだ。
いつの間にか緩められていた背中に回る腕の中で少し身じろいで胸元にあるプロシュートの顔と同じ高さになるため少し下がる。

「プロシュート、」
「なんだ」
「ふふふ」
「…はは、」

 くすくすと二人して笑う。
穏やかなその顔は先程迄と打って変わって優しさに満ち溢れている。
笑いが収まって来た頃、じっと私の顔を見つめるプロシュートの唇にかぶり付いてやった。
驚いて後ろに飛び退いたプロシュートが可愛くてまた笑うと今度は私がかぶりつかれる。
べろりと唇を舐められる感触に小さく笑うと今度は耳に噛みつかれてそのまま甘い囁きに酔い痴れた。

「なァ、食っちまいてぇ」

 首に腕を回して触れるだけのキスをすればプロシュートの綺麗な目と目があった。
奥に秘められた本能が抑えきれずにギラギラと輝いていて、私は今からこの人に食われるのだと思うとえも言われぬ高揚感を感じながら私はゆっくりと瞳を閉じた。

心臓ふたつ

噛み付く様なキスは血の味がした。


タイトルは舌様より
130513
 

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