うとうとと寝ぼけ目になりながらも携帯を弄る名前から携帯を奪う。
なにすんのォ、なんて間延びした声が聞こえてきたがお構い無しにテーブルに乗せて、それから名前の肩を押してベッドに身体を沈めさせた。

じょおすけ、とたどたどしく名前を呼ばれる。
なんだと聞き返して自分も同じ様に横に転がって腕を差し伸ばせば少し頭をあげて俺の腕に頭を乗せた。これは所謂腕枕というやつである。案外距離が近くてどきどきしているのは俺だけの秘密にしておこう。

睡魔の所為で細まった目を更に細めてゆるりと口角をあげて朗らかな笑みを浮かべた名前は寝ぼけているのか温もりを探して俺の胸へと擦り寄ってきた。可愛いっスねェ〜、なんて呑気に言っていれば意図せずして鎖骨に柔らかなものが当たった。それも、一瞬。
なんだ、と思い胸元の名前に目をやれば愛らしい笑みを浮かべながら俺の鎖骨にちゅ、と何度も何度も軽いキスを繰り返している。正直擽ったい。が、しかし俺は名前の行為を止めない。
くすくすと笑ってこそばゆいそれに耐えていれば次にはぬるりとしたものが首を這う。
慌てて顔を離し目を白黒させながら彼女を見ればぺろりと乾いた唇を舐めて微笑んでいる。ああ、しまった。

「お前、その癖なおせよォ」
「くせぇ?それよりじょおすけ、もっと寄ってよぉ」
「ああもう、何だってこんな奴と一緒に寝転んでるんだか」
「じょーすけ!」
「はいはい、分かりました。分かったから俺の服掴むのをヤメロって!皺になるっての!」
「じょおすけぇ、はやく…」
「あーあーあー…わーかったっスよォ…だから寝てろ、バカ名前」
「うっさァい…じょーすけの鎖骨、美味しそう」
「食うなよォ?」
「んん…」

ちくっとした痛みの後、近くにあった鏡を引き寄せて傾け、自分の鎖骨を見てみればくっきりと赤い痕が付いていた。
またやりやがった、とため息を一つ吐いて彼女の名前を呼ぶ。

「名前よォ〜痕つける癖なおせよな。俺のキレーな鎖骨が赤くなってんスよォ?」
「でも、」
「でもじゃねぇよ。治せって言ってんの。」
「…じょおすけ、痕つけとかなきゃ、どっか行っちゃうじゃん…」

うるうると目に涙を貯めて呟かれた言葉に耳を疑った。
俺がどこかへ行くゥ?あり得ない。
俺は昔からコイツしか見てなかったのだから、そんなこと、ある筈が無いのに。
ぐずぐずと鼻を啜って涙を零して俺に背を向けた名前の腹に腕を回して引き寄せる。
ぐっと近くなった距離にどきりとするも気に留めない様にして耳元で、優しく、丁寧に。一音一音確かめる様に囁く。

「あのっスねぇ…俺がどっか行っちまう、ってぇのは…あり得ねェ事っスよ」
「う、そだ。仗助人気者だから、可愛いこのところ、とか」
「だぁから、行かねぇって。」
「でも、だって…」
「俺が好きなのはアンタだけっスよ。今も、昔も。ずぅ〜〜〜〜〜っと、名前だけ見てきたんスよォ?」
「だぁってぇ…」
「不安になるのは…まぁ、しゃーないッスよ。でも、俺は離れない。幾ら言われたって、これだけは譲らねェよ。離れろって言われたって離れてやンねーから。」
「…仗助、ほんとに離れないでね」
「当たり前ッスよ。絶対、な」
「離れたら刺し殺してやる。バラバラにしてやるんだから」
「っはは!いっスね。それくれェじゃねぇと離れるかもしんねェ〜」
「はァ!?なにそれコロス。仗助嘘つきじゃん。許すまじ。」
「だから、それくらい言ってると離れらんなくなるっしょ?それでいーんスよ。離れるつもりは微塵もねぇけど、口約束。ね?」
「…しょうがないなぁ、仗助は」

へにゃりと笑ったのが空気でわかった。腹に回している手に小さな手を重ねられて温もりを感じる。
温かい。冷房のせいで冷えた手を重ね合う。
ついでに足も絡めれば名前はクスクスと肩を揺らして笑った。可愛い奴め。
うなじにかかる髪をそっと分けて退ける。
出てきた白く扇情的なうなじに優しく口付けて好きだぜ、と囁けば身を震わせて私も好きだよと微笑んだ。

あなたに眼球をあげる

(他の人を見なくて済むように)




title それがな弍か?
130822
 

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