「貴方って猫みたいよ、ジョルノ」 悠然とした態度でそう僕に告げる彼女から雑誌を奪って放る。 何するのよ、と睨めつけてくる彼女に面白くないですね、と呟いて彼女の上に乗れば重い!と声をあげて僕の腕を容赦無く叩いた。 結構痛いんですよ、と思いながらも口には出さず少しだけ体重をかけない様にすれば暴れていた名前も少しは落ち着いた。 そんなに抱きつかれるのが嫌なんですか、なんて口には出せないからムカついて抱き締める力を強めてやった。 首元にかかる息が擽ったいのか、名前は僕が息を吐くたび身を震わせる。 「…僕は猫じゃあありませんよ」 「当たり前じゃない。似てるだけよ、猫に」 「僕は其処まで自由じゃあない」 「どの口が言ってるの?」 「この口ですよ。」 ホラ、顎を突き出して顔を近づければ名前はくすくすと笑ってそうねと言った。 ぎゅうっと抱き締める力を強めた。 名前は腕をタップして痛いと言う。離すもんか。 おでこをこつんと合わせて見つめると名前は薄く笑って僕の唇を奪って行った。ちゅ、と可愛い音がしたのはそのせいである。 ずるい人だ。呟いて僕も彼女の唇を奪った。 ずるい人ね。彼女は幸せそうにふにゃりと笑って僕の背に腕を回した。 とくん、と彼女の心臓の音が聞こえた。 耳を当てるとくすぐったいと笑うけれど、それを無視してひたすらにその音を聞き続けた。 心臓の刻むビートは早過ぎず遅過ぎない。それでいて僕を安寧へと導いているようであった。 安心する。 ふ、と息を緩く吐いて目を伏せると瞼の裏側に張り付いた景色が鮮明に浮かび上がった。 赤い血飛沫と仲間の死。 それはどんな時でも僕に付き纏い離れなかった。 まるで僕のせいだと攻め立てるかのように。いつまでも脳裏に張り付いている。 しかし、名前の心臓の音を聞いているとそれは霞がかったように薄れて霧散した。 ゆるゆると頭を撫でる手を掴み、その手の甲に唇を寄せれば瞠目して、それからふにゃりと笑った。 「ジョルノ、貴方って本当、猫みたい」 「なら飼い主は貴方ですね」 「懐いてくれなきゃイヤよ?」 「…にゃあ、」 にゃあ。猫の鳴き真似をして彼女の首に擦りよればくすぐったそうに笑って、また僕の頭をくしゃりと撫でた。 首筋にちゅ、ちゅ、と啄ばむ様なキスを数回落として上目で彼女の顔をみれば幸せそうに口元を緩めている。 今一度顔を首筋に埋めて見つからないようこっそりと笑んでまた首筋にキスを落とした。 ふふふ、と笑う彼女の脇に手を居れて抱き上げて、反転させる。 すると彼女が僕を見下ろすような形になる。 中々いい眺めですね、名前。と笑って言ってやれば同じように笑って中々いい眺めね、ジョルノ。と反復した。 ふにゃりと気の緩んだ笑顔を浮かべたのは僕だか彼女だか分からないけれど、その時僕は、確かに幸せの中にいた。 背後を撫でる 罪悪感で身を滅ぼしそうだ。 title それがな弍か? 130709
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