!少し注意



この前新しく新調ベッド一式の上にくたりと寝転がってふかふかの枕に頭を預ける。
まるでホテルのベッドのような柔らかさは今までになかったもので、些細な幸せを噛み締めて頬を緩めた。

やはりベッドを買って良かった。
日本人だから、なんて理由で布団を買った結果があの様だ。柔らかかった布団も数ヶ月でペタンコになり、寝ている間に身体を痛めてしまう。
蕎麦柄の枕は、抱き枕には好きだけれど頭を乗せるには少しばかり固すぎる。
ついで、と一緒に買った大きな兎型の抱き枕を強く抱き締める。星座の描かれた青い大きな、へんてこな兎はのっぺりと薄く、ひょろりと細長い。

うふふ、なんて気持ちの悪い声を出しながら悦に浸る私の部屋に唐突に響いたノック。
はぁい、と返事をすれば僕です、と柔らかくも芯のあるテノールがそれに応えた。

あいてるよ。ベッドに寝転がったままそう言えばガチャリと捻られたドアノブと眩い光の差し込む扉。
幸い私のところにまで光は届いていないので、それほど眩しくはない。

再度ガチャリと音がして扉が閉められた。
今はまだ昼間なので部屋を最大限に暗くしても遮光カーテンをすり抜けて仄暗い程度で済む。
冷房をつけて程よい温度に設定しているから、暑過ぎず、かといって寒過ぎないこの部屋はとても居心地が良い。私は、この空間が何よりも好きだった。

段々と重くなる瞼を持ち上げて、いつの間にかベッドの前にまで来ていた彼を見やる。
気の抜けた顔をして私を見下ろしている彼に薄く笑むと彼は私の寝転ぶベッドに腰を下ろした。
ゆったりとした手付きで私の髪の毛を掬い上げたり、頭を撫でたりする彼の名前を呼んでその手を掴むと彼の口角はくっと吊り上がった。

「なんですか?」
「いや…なんでもないよ」
「寝ますか?」
「ジョルノが、いいなら…」
「…なら、僕も寝ます。」
「んん…狭いよ」
「抱きあって寝れば少しくらいはゆとりができますよ。ほら、つめてください」
「ジョルノ押して…」
「全く…そんなに新しいベッドは気持ちいいですか?」
「ベリッシモ、ディ・モールト…うん、ディ・モールトいいよ…ベネ。柔らかくてふわふわしているんだ」

それは、良かった。
呟いて私を抱き上げて奥に詰めて寝転んだジョルノが呟いた。
目の前にあるジョルノの胸板に頬を擦り寄せるとくすぐったかったのかクスクスと笑う。
心臓の音を聞いて、その上に軽いキスを落とせばヒュ、と音がしてジョルノの息が、刹那、止まった。
啄ばむ様に何度も何度もそこにキスを落とす。まるで彼の心臓に口付けるかの様に。
彼に掴まれた腕に掛けられる力はギチリと増してそろそろ骨が悲鳴をあげている。
ちゅ、と音を立てて唇を離すと腰を掴まれて引き上げられた。
目の前に広がっていた胸板から一転してその整った顔を見る。
切なげに細められた目と眉間に刻まれた皺に微笑んでその唇にキスをすれば途端に荒々しく塞がれる私の口。
うっとりとした顔で私に口付けるジョルノの首に腕を絡めて受け入れる。
暫くして淫靡な音を立てて離れた唇で息を吸って、吐いてを繰り返していると今度はジョルノが私の胸元に顔を埋めた。
抱える様に抱き締めて柔らかな金の髪に指を通す。サラサラと指の隙間から零れ落ちて行く金を見て静かに唇を寄せた。

「…名前、」
「なあに」
「名前、名前、名前…」
「なあに、ジョルノ」
「…貴方の心臓がほしい」

服の上から私と同じ様に、心臓の真上にキスを落とすジョルノの頭を撫でる。
くすぐっかくも愛しさを感じるその行為を甘んじて受け入れ彼の名前を呼べば嬉しそうな声色で返事が返って来た。

「ジョルノ、好き」
「あぁ…僕もだ。名前、好きですよ」
「ジョルノ、愛してる」
「えぇ、僕も。愛している、名前」

クスクスと二人笑って真っ白なシーツに包まれて瞼を落とした。
額をコツンと合わせてなおも笑う。身体を寄せ合って、二人で乗れば小さなベッドの中で私達はゆっくりと意識を沈めてゆく。
絡んだ指は離れることなくつながったままである。
このまま、この人と一つになれたら良いのに。
微睡んだ意識の中で私はそんなことを考えた。
彼の口元はいつに無く緩んでいた。

いつかさよならの日まで

貴方と共に生きて行きたいの。



title 舌
20130703
 

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