「ちょ、ちょちょっ、おま、ええんかお前。財前浮気しよるで」
「ははは、ええんやない?」
「は!?!」
「財前のやつ、これで何回目やろなぁ」
「えっ、なんなん?なに?どういうことなん?」
「せやから財前の浮気、別に珍しいことちゃうねや」
「ハァーーー!?!!!」

 バンッと机を叩いて立ち上がった謙也くんは名前!お前それでええんか!と謙也くんの方が悲しそうな顔をしながら私に詰め寄って来た。
チラッと窓の外を見ると可愛い女の子と腕を組んで歩く光と目が合う。驚いた顔をしていたけれど、恐らくバレたとでも思ったんだろう。最初から知ってる。
 視線を外して謙也くんに向ける。
今にも泣き出しそうな謙也くんのひよこ頭をぐしゃぐしゃに撫で回して慣れとるし束縛嫌いやから別に気にしないと言えば謙也くんは理解出来ないと唸りだした。こういう時に侑士くんが居てくれたら楽なのに。ため息をついて隣を見れば呆れた顔をする白石くん。目が合うとお互い苦笑して謙也くんのおでこにデコピンをかました。

「ったぁ!なにすんねん!」
「名前がええて言うてんねん。俺も納得いかんけど、俺らが口出ししてええもんちゃう」
「せ、やけどっ…」
「あんなぁ、謙也くん。私、別に浮気とかどうでもええねん。光やって、私にバレとるって知っときながらやってんねんから、ははは!」
「いやはははやないけど!?」
「光はまだ子供やからなぁ、可愛い可愛い」
「俺光ちゃう!俺は光やないから!」
「謙也くん髪の毛柔らかいなぁ、私謙也くんの髪の毛好き」
「お、おま…俺も、名前の髪の毛好きやけど…」
「あかん、二人の世界に入ってしもた」

 あははと笑って白石くんの髪の毛も撫でてやれば呆れた顔でそれでも笑った。優しい人やなぁ。
謙也くんのもふもふの髪の毛をしこたま撫で回したところでまた外を見ると光がまだこっちを見とった。泣きそうな顔でずっとこっちを見る光に意地悪してやろうと思い目の前の謙也くんに抱きつけば謙也くんは慌てて名前を呼ぶけど無視だ。
幼馴染の特権ーと言いながら白石くんにピースを向けると白石くんは「自分、悪魔やなぁ」と言って意地悪く笑う。どうやら見られていたらしい。
私も悪戯っ子な笑みを向けてうふふと笑うと謙也くんは頭の上にクエスチョンマークを浮かべてなんだなんだと騒ぐ。
 光は泣きながら走って何処かへ行ってしまった。

「あー、ほんま悪魔や。鬼や!」
「白石くん、酷いわぁ。悪いんはあっち。」
「なぁー、なんの話なん?」
「名前が悪魔やーっちゅう話」
「えっ、なんで?名前優しいで!俺の幼馴染やし!」
「もう、謙也くんかわええなぁ!流石私の幼馴染やわ!」
「こーら、謙也巻き込んだ奴が何言いよるん」
「俺巻き込まれたん?何に!?」
「もうそろそろ来るでぇ、ほらあと10秒」
「今日からは謙也くん巻き込むねん。なんたって私の幼馴染やねんから、ね?」
「は?え!?」
「ろぉーく、ごぉー、よーん」
「「3、2、1!」」
「やからなんやねん!!」

 バンッと大きな音を立てて開かれた教室の扉。壊れてやいないかと見るが案外強度はいいらしい。無傷だ。
ぽかーんと口を開けて開けた本人を見つめている謙也くんな頭を見せつけるように撫でてやればわっと泣き始めた、つい先程扉をぶち壊す勢いでやって来た光。
ぐすぐすと泣きながらつっ立っている姿が可愛くて可愛くておいでおいでと手で招けば駆け寄ってきて抱きついてきた。可愛い。

「せ、ぱ…捨てんといてぇえ…」
「おま、お前財前か!は?何これ!?」
「名前がな、財前が浮気ばっかしよるから、懲らしめたろーって先週から俺を使って財前に嫉妬させよんねや。で、今日からは謙也や」
「お、俺?!巻き込まれたってそういうことか!」
「あはは、ごめんね謙也くん」
「せんぱ、無視せんといてぇええ」
「いや財前泣きすぎやろ」
「可愛いやろぉ?うちの光くん」
「あーせやせや。可愛い可愛い」
「部長に言われても、嬉しないわっ」
「ツンデレ可愛い…光、よしよし」
「うぅ、先輩…ごめん、なさいぃ」
「なんやこれは…なんやねん…」
「ははは、これやからやめられんねんなぁ」
「す、捨てたら許さんもん…!」
「誰やこれ!!これ誰や!誰!?」

 ギャアギャアと騒ぎ立てる謙也くんの口を白石くんに塞がせて教室から追い出した。
私の膝に跨り泣きながら抱きついてくる光の頭を撫でて浮気はやめようなーと言えばそれは無理だと言われる。
また明日も同じ展開になるだろうと予想しながら私は大声で笑った。



性悪女
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