ポツポツと雨が降りだした。
周りの皆は降ってきたか、と言わんばかりの憎々しい表情で傘をさす
だけど私は傘をささない
否、させない
何故なら傘を持っていないから
降水確率70%と天気予報で言っていたけれど、私は雨に濡れるのが好きだからあえて傘を置いてきた。
雨があたり、ブラウスに染み込む。
それと全く同じように、固いコンクリートに雨がぶち当たり、びちっと音を立てて染み込む。
雨が当たった場所の色は、灰色ではなくなった。
黒ずんでいる。

「何、してんだ?」

聞きなれた声と口調に思わず笑みが漏れる。
振り替えると、あぁやっぱり。
同じクラスで、同じ塾に通うサタンの息子、燐だった。
彼は怪訝そうな顔で私を見つめている。
雨足が強くなった。

『色をね、見てるの。』
「色?」
『うん。コンクリート、灰色でしょ?雨が当たると黒ずんだ色になるから、面白くって』
「面白いのか?」
『私にはね。』

そう、無愛想に呟いて視線をコンクリートに戻す。
もうほとんど黒ずんでいた。

「風邪引くぞ?」
『ダイジョウブ、私強いから』
「いや、強い弱いじゃないだろ」

なんて冷静にツッコミを返してくるからなんだか可笑しくて、ついついふふ、と笑ってしまった。

「ほら、傘入れてやっから…帰るぞ」
『ありがとう、燐』

強く腕を引かれて歩き出す。
まだまだ雨は降っている。

『ねえ、燐』
「ん、どーした」

コンクリートは何故灰色なの?

(知らねぇ、と言って彼は無邪気に笑った)

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タイトルは表裏一体さんにお借りしました
 

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