狂愛ディペンデンス | ナノ
「ねぇ仁王、私昨日、彼女とお話したの」
いつもの優しい笑みを浮かべて俺の放った言葉はいつになく穏やかな声色だったがどこか狂気染みていた。 というか、何故、どうして、なまえがあんな奴と会話をしたのかが分からない。理解できない。俺を守るためか、助けるためか、はたまた好奇心かなんて俺にはまったく理解も想像もできなかった。 ただひたすらなんで、どうして、と呟く俺になまえはため息を小さく吐いた。 ビクリと体を強張らせてなまえ、?と再度彼女の名前を呼べば今度はちょっと困ったような顔をして俺を抱きしめてきた。 暖かい腕が俺の首にからまり、頭がふわふわとした。 嫌われて、ないんか?
「そんなの、仁王を私のものだと示したかったからに決まっているじゃないの」 「なまえ、」 「もしかして、私が仁王を嫌ったとでも思ったの?馬鹿ね、それこそありえない、おかしな話よ」 「なまえっ、」 「仁王雅治、私は貴方を世界で一番何よりも誰よりもどんな万物よりも愛しているのだから、嫌うはずがないじゃない」 「っ、好き、好きじゃ…なまえ、ごめんな…っ、ごめ」 「いいの、いいのよだから謝らないで?貴方が泣いていると私も泣きたくなってしまうの。だから泣かないで。愛してるわ」 「っ、ごめ…あ、昨日…」 「どうかしたの?」 「昨日…何も、されんかったか?」 「…どうして?」
一拍、間をおいて返ってきた返事に俺は直感的に何かをされたというのが分かった。 俺の首にまわっている腕を軽く、軽く、壊れ物を扱うかのように優しく掴んでなまえの目をじっと見つめる。 どうしたの、と何も知らないと言うような惚けた顔で聞くもんだから俺はなまえのポケットからカッターナイフを抜き取って刃を出し、首に突きつけた。 なぁ、何をされたんじゃ?
「何が、あったんじゃ?」 「、仁王?」 「何があったんじゃ」 「に、お」 「言え」 「まさ、はる」 「早く、早く言いんしゃい…っ」 「押された、だけよ」 「…嘘じゃなか?」 「本当、だから、カッター」 「ん…すまん、」 「嘘ついた私が悪いのよ…ごめんね、仁王」 「でも、でも血が…っ、ごめん、俺…なまえに何かあったって、」 「大丈夫、大丈夫よ雅治。むしろ、嬉しいもの」 「うれ、し…?」 「えぇ、雅治がつけた傷だもの、嬉しくないわけがないわ」 「…ほんと、」 「本当よ。」
なまえの首からは赤い血がゆっくりと垂れていた。 痛いだろうに、嬉しいと頬をほんのり染めて微笑み俺の頭を撫でるなまえに、俺はまた嬉しくなって傷ついた首に齧り付き、血を舐めればなまえはビクリと肩を揺らる。 その姿がまた可愛くて俺はより一層、強く首に齧り付いた。 べロリと傷口に舌を這わせればきゅっと目を瞑り痛みに耐えるなまえの表情が、愛しい。 可愛くて、美しくて、俺は貪るように彼女の唇を奪った。
君が好きだから (傷つけて、しまうんじゃよ)
120807
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