狂愛ディペンデンス | ナノ
「おはよう、仁王」 「おぉ、おはよう…なまえ」
挨拶をして柔らかく微笑むなまえに同じ様に挨拶をしてそして同じように微笑めば彼女はより一層笑みを深めた。 その表情に思わず息が止まったがいつものことだと思って抱きしめれば優しく抱きしめ返してくれた。 昨日のことがあったからか今日、こうして抱きしめあえるのはなんだか本当に久しぶりのような気がしてならない。 だけどわしの体はこの温もりを覚えていたと言うかのごとく腕に力を込める。 そのせいで痛い、と怒られたが仕方がない。昨日来なかったなまえが悪いと言えば困ったように笑ってごめんねつ呟いた。 怒ってるわけじゃなか。寂しかったんじゃ。
「ごめんね、仁王。」 「怒ってなか…」 「本当?よかった」 「なまえ、ちゅー」 「ここ教室よ?…屋上で、ね」
ね、と言って艶やかな笑みを浮かべるなまえをコレほどまでに愛おしいと思ったことはない…わけでもない。 毎日毎日なまえのことで頭がいっぱいなわしは授業を抜け出してはなまえを困らせる。 でもその困った表情も大好きで、ごめんねと言って眉尻を下げる癖も何もかも大好きで覚えてしまっている。 あぁ、本当に大好きで大好きで愛しているんじゃよ。
* 仁王の様子が可笑しいことには朝から気づいていた。 何があったのかもよく分からないまま仁王に抱きしめられて少し戸惑ったけどまぁいいか、と自己完結して抱きしめ返せば1日ぶりのあの仁王の匂いがしてとても心地好かった。 1日ぶり、というだけなのに私には1ヶ月…いや、1年ぶりのような気がしてなんだか可笑しかった。 ふふふ、と笑い声を漏らせば仁王は不思議そうな顔で私の顔を覗き込んだ。 その仕草が可愛くてぎゅう、と腕に力を込めれば今度は吃驚したような顔をして破顔した。 満面の笑みを浮かべて私の名前を呼ぶ仁王は本当に可愛くてしょうがない。 雅治、と名前を呼べば猫のように私に擦り寄ってあっという間にキスをする。 だけど教室だから、と言えば今度は拗ねた様な顔をする。 全部が全部1年ぶりのようで本当におかしかった。 だけど私の耳は、目は…体は雅治を覚えているようで。 ふとした仕草や足音に息遣い、次の行動パターンまでもが全て分かった。 だからこそ教室に入ってきたピンクの目の女の子が仁王に擦り寄っている姿を見ると吐き気がした。 そこは私の場所であって貴方の場所ではないと突き飛ばして持っているカッターナイフでズタズタにしてやりたかった。 だけど犯罪になってしまうから私はできるだけ優しく、そして遠まわしに仁王は私のものだといえばあの子は般若のような顔をして私に怒鳴りつけてきた。 勿論雅治がいないところで、ね。
「アンタうざいのよ!雅治は私のなんだから邪魔しないでよね!」 「……」 「大体アンタ、可愛くもないのに何雅治と腕組んだりしてるのよ!抱きしめたり…鬱陶しいのよ!」 「……」 「何とか言いなさいよ!馬鹿にしてるの!?」 「別に馬鹿になんかしてませんよ。ただ単に貴方の話を聞いて雅治が可哀相だと思っていただけですので」 「雅治って呼び捨てにしていいのは私だけよ!っていうか、可哀相ってなに!?姫に愛されて雅治は幸せじゃない!」 「勘違いも甚だしい。貴方は仁王の思考が分かるの?仁王がこれから何をしようとしているかが全て分かるの?」 「分かるわけないじゃない!」 「あら、じゃあ矛盾してるわね。雅治は貴方に好かれて幸せだ、なんて言ってたの?」 「言って、ないけど・・・っ」 「じゃあどうしてそう思うの?」 「え、」 「何の根拠も無しに嬉しい、だなんてちゃんちゃら可笑しいんじゃないかしら?」 「う、るさい!うるさいうるさい!」 「…貴方のほうが煩いわよ?」
ニッコリと笑って言ってやれば女は顔を真っ赤にして私を突き飛ばした。 しりもちをついて、少しばかり痛かったけれどその状態のまままたにっこりと笑えば私を一睨みして走り去っていった。
無様な女の醜い嫉妬 (あらやだ、埃がついちゃったじゃない)
120422
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