君と出逢った一週間 | ナノ
両手で携帯を持って一生懸命にボタンを打つ。
唇を尖らせてあーでもないこーでもないと唸りながら文章を作り、やっとできたと笑って送信ボタンを押す。
どんな返事がくるから、と思いながらルンルン気分で着替える。
小さくて可愛い刺繍入りの白いキャミソールワンピースに黒いレギンスを履いて、薄手のカーディガンを羽織る。
鏡の前で薄く化粧をして笑ってみた。なんだか可笑しくてふへへと笑っていれば携帯が鳴った。
ボタンを押して電話に出る。メールかと思っていたから、少し吃驚したけど。

「もしもし、」
『あー、俺だ、ヤス』
「うん、知ってるよ!んでね、今日あいてるって言ってたでしょ?」
『オウ』
「だからね、ヤスくんとお出かけしたいなぁって」
『分かった。今何時だ?』
「ええっと…9時半!」
『じゃあ10時に…学校前でいいか』
「うん!ヤスくん、めーいっぱいおめかしして行くね!」
『おう、期待してるわ。んじゃな、変な奴に絡まれんなよ』
「大丈夫!んじゃあ、また後でね!」

ブツ、と電話を切ってキャッキャと騒ぐ。
生憎今日は両親が遠出しているので家には私しかいない。
即ちどれだけ一人で騒ごうがなんら問題ないのだ。
携帯をベッドに投げ捨てて朝食の用意をする。
少し遅いかもしれないけれど、トーストを焼いてマーガリンを塗り、紅茶を入れてヨーグルトも出す。
いただきますと恭しく挨拶してからトーストに手をつけて、あっと言う間に完食。
歯を磨いてリップを塗り、伸びをしてから大きく深呼吸をする。
胸がドキドキする。
時計を見ればもう50分だったので携帯とバッグを持って慌てて玄関に走り、サンダルを履いて意気揚々と出かけた。勿論家の鍵は閉めた。
10時丁度に校門前についた。キョロキョロと辺りを見回してみれば同じくキョロキョロしてるヤスくんを発見した。
見つけた瞬間自分の口角がぐい、とあがったのが分かった。
だけどそれを隠すことはせず、そのまま走ってどん、と抱きつけば少し吃驚したような声を上げて、それから私の頭を撫でてくれた。
抱きついたままヤスくんを仰ぎ見れば学校のときとはまた違ってかっこよかった。

「ヤスくん、かっこいい」
「サンキュ。お前も可愛い格好してんな」
「おめかししてきたんだ!似合う?」
「おー。化粧もしてんだな」
「えへへ、ヤスくんとお出かけできるの、嬉しくて」

へへへと笑いながら言えば可愛いこと言ってくれるな、と照れたように笑ったヤスくんの手を繋いだ。
どこ行くんだ、と聞かれたので決めていないといえばぽかんとした顔ののち盛大に噴出した。

「ぶはっ…おま、行く場所決めてねぇーのかよ…くくっ」
「うん、ヤスくんの行きたいところに行こう!」
「俺?…別に、ねぇーよ」
「じゃあ…うーん、映画行こう映画!」
「何見んだよ?」
「舞妓haaa○!!だよ」
「お前っ…ぶははは!おま、舞妓っ…ぶふ、くははっ!」
「さぁさ、行きましょうぞ!」

手を引いて歩き出せばヒーヒー言いながらも歩き出したヤスくん。
楽しみだね、と言えばそうだな、と言って私のバッグを持ってくれた。
さり気無い優しさに私の心はまた、温かくなってふにゃっとだらしない顔でお礼を言えばどういたしまして、という言葉といつもの優しげな笑顔が返ってきた。

土曜日
(映画の後に撮ったプリクラは携帯に丁寧に張りました。)


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