君と出逢った一週間 | ナノ
カチカチと携帯を弄りながら廊下を歩いていれば秋穂ちゃんに危ないでしょう、と叱られた。
ごめんね、と言って謝れば次からしちゃだめよ、と言って私の頭を軽く撫でた。
今日、ヤスくんの部活見に行くの、と何気なしに言えばそっか、とだけ言って秋穂ちゃんは笑った。
一緒に来てほしい、と言えば今日は用事があるからごめん、と申し訳なさそうな顔で言われた。
いいよ、じゃあ今度一緒に行こうねと言えば分かった、と言ってくれた。
それが嬉しくてふふふ、と笑えば秋穂ちゃんも笑っていた。

*
お昼休み、ヤスくんからメールがきて、今からそっち行く、とだけ書かれていてなんだかヤスくんらしいな、と笑えば秋穂ちゃんが今日も先輩と食べるの?と聞いてきた。
うん、と言えばケンくんが寂しいの、なんていいながら私を見てきたからケンくん子供ー!と言えばお前より大人じゃ、と言われた。
ごもっとも、としか言いようが無くて秋穂ちゃんを呼べばどっちもどっちだよ、と言われた。
嘘だぁー、と言って笑っていればヤスくんが来て、手招きされた。
あ、と声を漏らして行って来ます。と言えば二人は笑って手を振ってくれた。
ヤスくんの元に行って、じーっと目を見れば手を繋いでくれた。
温かくて骨ばった、男の子らしい手になんだか笑みが漏れる。
そういえば、放課後が楽しみだと考えながらヤスくんと一緒にご飯を食べた。

*
待ちに待った放課後、とでも言えばいいのか、私は凄くワクワクしていた。
ケンくんと車谷くんにはもう伝えてあって、一緒に行くかと言われたけれどヤスくんと一緒に行く、と言えばケンくんは泣きながらワシのなまえがぁー…!と言いながら車谷くんに引き摺られて先に部活に行ってしまった。
それから数分して、ヤスくんが教室に来た。
教室にはもう私しか居なくて、二人きりになってしまい、少し恥ずかしかった。
だけどヤスくんは、笑って行くか、と私に手を差し伸べてくれた。
うん、と頷いてその手を取ればぎゅ、と握ってくれた。
そのまま、今日あった色んな話をしながら体育館に向かった。
体育館の扉を開けば、皆はまだだった。
多分、着替えてるんだと思う。
ヤスくんも、着替えてくると行って部室に行ってしまった。
一人残された私は、不自然に一つだけ転がっていたボールを拾って投げた。
シュートの軌道がよかったんだろう、リングにあたらずにネットを潜り、バスケットボール独特に音を立てて床に転がった。
やった、と喜んでいれば後ろからおー、という声が聞こえた。
吃驚して後ろを振り向けば、着替え終わった車谷くんの姿。

「あっ、車谷くんだ」
「今のキレイに入ったね!バスケしてたの?」
「ううん、授業でしかしたことないよ。」
「そうなの?でも今の凄かったよ」
「アリガトウ!私も嬉しかったの。」

えへへ、と二人して笑いながら会話をしていればケンくんとメガネの人と、坊主頭の人がやってきた。
なんだか怖くて車谷くんの後ろに隠れればケンくんが頭ちょっと出とるぞ、と言った。
はっとして車谷くんを見ればなんだか悲哀に満ちた表情をしていた。
ケンくん、今から練習だね!と言えばそうじゃの、と言われた。
頑張ってね、と言えばオウ、と言って私の髪の毛をぐちゃぐちゃにした。
もう、と言って髪の毛を直していれば目の前に大きな人影が。

「え、うお」
「貴方は・・・!」
「ひっ!?け、ケンくん!」
「あんさん、何やっとるんじゃ」
「メル友になりたいランキング第16位のみょうじさんが何故ここにいる!」
「メル…?16位って何!」
「そこ?ちゅーか…なまえ、安原さん来たで」

ケンくんの指差したほうに顔を向ければ着替え終わったヤスくんが。
ケンくんアリガト、と短く呟いてヤスくんに駆け寄ればわしゃわしゃと頭を撫でられた。

「おー、いい子に待ってたか?」
「うん!私、いい子!」
「そっか。んじゃ、ご褒美として頭撫でてやる」
「わーい!」

えへへ、と笑ってヤスくんを見上げれば優しく笑っていつものように頭を撫でてくれる。
うふふ、と笑えばははっと笑われた。
ヤスくん、頑張ってねと言えばオウ、と私の頭をぽんぽんと叩いて皆のところへ連れて行ってくれた。
正直ちょっと怖かったから、ヤスくんの後ろに隠れてたんだけど。
皆優しくて、吃驚した。
チアキくんは私に飴をくれた。
モモハルさんはちょっと怖かったけど、ゆっくりしてけと言ってくれた。
ナベさんは君がヤスの!とか何とか言いながら私の頭を撫でた。嬉しかった。
チャッキーさんは、小動物のようだ・・・!って言ってナベさんと一緒に私の頭を撫でた。凄く優しい手つきだった。
ナナオちゃんは、よろしくね、と言って握手してくれた。笑顔が可愛いな、って思った。
車谷くんはみょうじさん、今日はいっぱい見ていってね!と言ってブンブンと手を振ってくれた。
ケンくんはいつも通りでした。かっこわらい。

「じゃあ、今度は私のお友達をご紹介します!」

胸を張って言えば皆はおー、と言って拍手をしてくれた。
むふふ、と笑ってまず一人目!と大きい声を上げれば皆はごくり、と喉を鳴らした。

「えっとね、私の親友でお姉ちゃんみたいな、秋穂ちゃん」
「佐藤か。一緒に来とらんのか?」
「うん、今日は用事があるの、って言ったのですよ!」
「じゃあ今日会えないのか?」
「今度、一緒に見に来るって!」

そっか、と言ってじゃあ次!と言えばまた皆は喉を鳴らした。

「我等がバスケ部のエース、ケンくんだよ!」
「ワシか!ワシかなまえ!なまえ…!」
「そうだよケンくん!ケンくんにはね、いっぱいいーっぱいお世話になってるもんね!」
「ワシは嬉しいでなまえ…!」
「うん、私も嬉しい!」

そういってわーいと言ってケンくんに抱きつけばワシの妹…!と言って抱きしめ返してくれた。
コレもいつもどおり。ふふふ、と笑っていれば次行こう次!とチアキくんが言った。
じゃあ次に行きましょう、と言えば皆は笑った。

「次はね、ちびっ子なんて言わせない!150はあるんだぞ☆車谷くんでーす!」
「僕!?わーい!」

飛び跳ねる車谷くんに、いえー!と言えばイエー!と返してくれた。
手を取り合って一緒に跳ねていたらチアキくんが車谷くんの頭を叩いて終わった。
頭から煙出てたけど、大丈夫かな、と思ったけど放置して次に行きます!と言った。

「次は、皆大好き!優しい人です、ヤスくん!」

と言ってヤスくんの腕を引けばうお、と言って立ち上がった。
へへへ、と笑えばヤスくんも笑ってくれた。
その様子をチアキくんが泣きながら見てたらしく、七尾ちゃんが私に次行こう!と言った。
けれど。

「えっ、次もうないよ」
「は?」
「おしまい」
「え、え…4人?」
「4人もいるんだよ?」
「…トビ!説明しろ」

お仕舞いなのに、皆は不思議そうに私を見ながらケンくんを呼んだ。
ケンくんは渋々、と言ったように皆を連れて体育館を出て行った。
残されたのは私とヤスくんだけ。
今日の練習はいいのかな、と思ったけど女子もまだいなかったからまだなんだな、と思った。
転がっていたボールを手に持ってぼんやりしていたらヤスくんに声を掛けられた。
なぁに、と言えばバツが悪そうな顔をしながら友達、と言った。
私はあぁ、と言って教室でのことを話した。
するとヤスくんは悲しそうな顔で辛くねぇか、と言ってくれた。
全然、ケンくんも秋穂ちゃんもいるもん。と言えばヤスくんは悲しげに笑った。

「それに、」
「それに?」
「今はね、もうヤスくんがいるもん」
「!」
「寂しくないよ。みんな甘やかしてくれるから」

そういってボールを見つめて笑えばヤスくんは私の手を引いて、そして抱きしめた。
ヤスくんの温もりが、なんだか優しくて。
目を瞑れば教室での思い出を沢山思い出した。
不思議ちゃんと呼ばれてからかわれては、違うと言って怒る。
そんな私を見て、笑って馬鹿にする皆。
本当にいろんなことを思い出して、涙が出てきた。
それに気付いたのか、ヤスくんは私を抱きしめたまま頭を撫でてくれた。
俺しかいねぇから、泣けよと言ってくれたんだけど、私は我慢した。
フルフルと首を振ってヤスくんにしがみつくように腕を回せばヤスくんもぎゅっと力を込めて抱きしめてくれた。
ヤスくんの匂いがして、目を開けばヤスくんのお洋服があって。
私は幸せ者だ。私は恵まれているんだよ。と頭の中で繰り返せば不安や悲しみはふわりと解けて消えた。
ありがとう、と言って離れればヤスくんはどういたしまして、と言って笑った。


金曜日

(あぁそうか、私は貴方が好きなんだ)


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わけわかめぇ…


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