君と出逢った一週間 | ナノ
ハジメマシテ、私はみょうじなまえです。
九頭龍高校に通う一年生です。
好きなものはお空と雨さんと秋穂ちゃん。
嫌いなものは喧嘩と病気と数学さんと、私を変わってると言う人タチ。

人は私を"不思議ちゃん"と呼びます。
何でも変わってるからだそうです。
センセーも私は変わってると言いました。
だけど私は秋穂ちゃんと一緒、同じニンゲンです。
皆と一緒です。

「あっ!」

今日もいい天気だな、とお空を見上げていたら手に持っていたバスケットボールが落ちてしまった。
慌ててとろうとするも、坂道だから待ってはくれない。

「ボール、!」

転ける、そう思ったその時だった。いきなりボールが止まって、私も止まった。
強い衝撃が身体に響く
痛い、と小さく呟けば頭上から大丈夫か、という声が。

誰だろうと頭をあげれば、かっこいい男の人が私を支えてくれていた。
九頭龍高校の制服を着ているから、先輩かな、と思って敬語を使った。

「ドウモ、ありがとうゴザイマス」
「あぁ、気にすんな。怪我ねぇか?」
「はい、大丈夫ですヨ!私は、元気です」
「変わった奴だな。お前何年?」

「…一年」
「いきなり無愛想かよ。名前は?」
「教えないです」
「はぁ?」

「私、貴方キライです」
「はぁあ?」

意味わかんねーと言ってケンくんのボールを片手に頬をポリポリとかく、先輩にべーっと舌を出した

「わっけわかんねー。なんで怒るんだよ。」
「私、変わってないもん」
「はぁ?」

意味が分からない、という顔をした先輩からボールを奪ってムスッとした顔を向ける。

「私、不思議ちゃんじゃないです。私は私だもん」
「…変わってるっつったから怒ってんのか」
「ピンポンです。私、秋穂ちゃんと一緒だもん」
「アキホちゃん?まぁ、あれだ、悪かったな。」
「なにが、です」

意味が分からなくて首を傾げればわしゃわしゃと頭を撫でられた。
なにごとだ、と思いつつ目をパチパチとさせれば、変わってるって言って、悪かったなと言った。
謝る人なんて、ケンくん以来でなんだか恥ずかしかった。
いいですよう!と笑って返事を返せば先輩も笑ってよかった、と言った。

「ところで、先輩さんのお名前、なんていうんですか?」
「俺?俺はな、安原真一っつーんだ。皆はヤスっつーけどな」
「んじゃ、私はヤスくんって呼びます!」
「ヤスくん?…まぁ、いいか。で、お前の名前は?」
「私は、みょうじなまえって言います、です。」
「なまえな。いい名前だな」

そう言ってヤスくんはまた私の頭を撫でて、じゃあこれからバスケするからまたな、と言ってどこかへ行ってしまった。
残された私はというと、ケンくんのボールを持ってその場に突っ立っていた。
あとからきたケンくんに、どこ行っとんじゃアホ、と頭を小突かれてやっと意識が浮上した。

「ヤスくん、かっこよかったなぁ!」
「ヤスくん…?誰じゃそれ」
「九頭龍高校の先輩!さっき、お友達になったの」
「そうけ。ほれ、ボール貸し。行くでなまえ」
「うん、ケンくんバスケットボールうまいもんね!」
「会話になっとらんぞ。」

さっさと行ってしまうケンくんの後ろ姿を必死に追いかけながら、私はヤスくんのことを思い出していた。
ヤスくん、優しくていい人だったなーと思っていたらケンくんの背中にぶつかった。
アホか、と呆れ顔で言うケンくんにヤスくんのこと思い出してたというと優しげに笑ってよかったのう、と頭を撫でてくれた。
ヤスくん、また会いたいな!

月曜日

(私の初恋の、はじまり、ハジマリ。)
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突発的に始めたヤスさん連載…
ヤスさん優しすぎるよ!誰だよ!
ケンくんとは言わずもがなトビくんです。
ヒロインとは兄弟みたいな感じですね。


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