誇り高き至高の月 | ナノ

バルバッド編-12


「で、考えた結果がこれなんですねレン様!」

「うん…ロゼ、手伝ってくれてありがとうね。良い案だとは思ったんだけれど…」

小さな子供にパンを渡しながら、一緒に頑張ってくれているロゼにお礼を言う。
アリババくんたちと分かれた後、私たちはバルバッドのスラム街に来ていた。
腕にバルバッドの港市場で購入した、大量の食料を抱えて。

「少しでもアリババくんの助けになればって思ったんだけど…でも、何か違うのよね…」

「あ、でも、みんな嬉しそうに受け取ってくれるし、ロゼはとっても良いことをしてるなぁって思いますよ?」

「っありがとロゼ!!」

つい嬉しくなって抱きつくと、ロゼはくすぐったそうに身をよじった。
容姿が容姿のため、人前では顔を隠すようにフードを被っているロゼの表情は確認できないけれど、声色から楽しそうな彼女の様子が確認できる。
何かアリババくんの助けになれそうなことがしたい、そう思った私は何か出来そうなことを考えてみたけれど特に良い案は出てこなくて。
本国から許可がないので、勝手にバルバッドの政治に口出しする訳にもいかず。
悩んだ末に思いついたことは、市場で食料を大量買いをし、飢えに苦しんでいる人たちに食料を配るということだった。

「腹が減っては戦は出来ぬ、とも言いますしね」

「ルシア!おかえりなさい!」

向こうは配り終えました、そう言ってルシアが食料の追加を持ってきてくれた。
三人で忙しく動き回って、食料を配り回る。

「はい、キミの分よ」

「おねえちゃん、ありがとー!」

「…と、これで終わりかな?」

昼から始めたはずなのに、気づいたらいつの間にか日が落ちていて。
配る食料も無くなって、ようやく息をつく。

「もう遅いですし、宿に戻りましょう」

「ええ」

ルシアの提案に頷き、宿に戻ろうとしたその時だった。
空に走る閃光。
少し遅れて、何かが爆発したような大きな音が響く。

「何の音…?」

「レン様!あっちの方です!あの、行ってみますか?」

流石ロゼだ。
彼女の鋭い聴覚は、的確に場所を掴んでいて。
行ってみるか、否か。
もしかしたら今ので怪我人が出ているかもしれない。

「っ急ぎましょう!」

ロゼの先導で、スラムの街並みを走り抜ける。
時折聞こえてくる爆発音に焦りを感じながら走っていると開けた場所に出た。
逃げ惑う人々。
その中に見知った顔ぶれを見つけ、思わず足を止める。
シンドバッド王とその従者のジャーファルにマスルール。
その近くには怪我をしたのだろうか、うずくまるアリババくんと彼を支える少女。
そして午前中にバルバッドの王宮で出会ったジュダルという神官と、それに対峙している青い髪の少年。
ピリピリとした緊張が漂う中、ジュダルが楽しそうに口を開いた。

「教えてやるよ、素人ども!魔力はそのまま撃っても大した威力はねえ。だけど、魔力を生み出すルフ達に、とある命令を与えると…」

ジュダルの杖の先に光が集まっていき、激しい輝きを放つ。
そしてそれは、ばちばちと小さな閃光を放ち始めた。
彼が魔法を使おうとしているのは見るからに明らかで。
でも、まだ辺りには一般の民が大勢いて、このままではかなりの被害が出てしまう。
何としても彼を、ジュダルを止めなければ。

「この通り!雷魔法の完成だぜ!」

「っルシア、ごめんなさい!」

「レン様!?」

私のしようとしていることを感じ取ったのだろう。
引き留めようと伸ばされたルシアの手を振り払い、気がつけば私は無意識のままにジュダルと青い髪の少年の間に飛び込んでいた。


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