卒業の歌、友達の歌 | ナノ
桜の木


ひらひら、はらはら


 綺麗な薄紅色の花びらがあちらこちらへと自由気ままに落ち続ける。春特有とも言える暖かい陽光を受ける様子はさながら舞台を照らすスポットライトのようにも見える。ような気もする。


ひらひら・・・


「花見してー・・・」


はらはら・・・


「そしてたらふくメシを食いたい・・・」


ざあああああぁ・・・・・


「満開の桜を前にして言う事はそれだけか」

 将吾はもう慣れきったと言わんばかりの雰囲気を眼差しに込め、睨むことも溜息を吐くこともせずに呟く。そんな現在唯一のツッコミを無視し翔流と響希は綺麗な花びらを眺め続ける。呆然と、購買で買ってきた数個のパンを抱え校門近くの桜を延々と眺め続ける。その光景は軽く異様だ。
 校門の横で抜け出す生徒がいないか監視する先生も変なモノを見る目でこちらを横目で見てくる。いっそ思い切り凝視されたほうが気分も良いというものだ。
 でもその気持ちはよくわかる。将吾は心中でそう呟き、足を一歩後ろへ引いた。ジャリ、と小石が擦れる音をわざとたてたが、二人には聞こえていないようだ。そんな教職員とツッコミの心をよそに変人2人は新たな話題へと移っていく。

「・・・そういや、小学校の頃に公衆電話に『777』か『111』か忘れたけどそういう番号を掛けたら」

「あったな、『さくらさくら』が流れてきてそれを聞いたら事故るとか」

 翔流の考えを読むかのような素早さで響希が続きを言う、漫才のようなリズムで言う。でも笑えない。周りの生徒達の注目を集め始めているので笑えない。

「・・・お前らそろそろ帰るぞ。今花見してる時点でメシが食えなくなる」

 恥ずかしいとか、切ないとかそういうのを抜きにしてとりあえず至極まっとうなことを言ってみる。すると二人はようやく思い出したかのように振り向き、まだ変な会話をしたりないと言わん顔で将吾のほうへ向かっていく。

「なあ将吾、『111』だったか、『777』か覚えてない?」

「黙れ」

 なんとも言えない顔をした将吾に翔流は理解してない顔をし、響希は面白そうな顔をする。かたや無意識、かたや確信犯なだけに厄介である。
 教室に帰るとクラスの全員に哀れみの目で見られた将吾が今度は渋い顔をした。
教室に帰るとクラスの全員に哀れみの目で見られた将吾が今度は渋い顔をした。





「面白いツラだな将吾クン」
「失せろ」






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卒業の歌、友達の歌


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