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 弓道場の前で金久保と木之瀬と宮地を捕まえてボッキーを一本差し出す。

「これを進呈する」

「は?」

「え…これ」

「それは…ポッキーですか?」

「ポキッと折れないけど名目上はポッキーではある」

 不安げな表情をする三人に「さあ受け取れ」とぐいぐい近付けると自然な動きで遠退かれた。傷つく。

「逃げんなし。ほらやんよ」

「いえ…これから部活なので…」

 嫌そうな顔を隠しつつに宮地は柔らかく断ってくるが、それら一切を無視して無理矢理一袋握らせた。

「遠慮すんな。ほら金久保と木之瀬も」

「うーん…一樹が泣いてたから、前歯が痛くなるって」

 会ったのか。しかもかなり根に持っているとみた。

「それは特殊な例だから。普通はちょっと歯茎に刺さるレベルだし」

「先輩は刺さったんですか?」

「まーな」

「マヌ…いえ気をつけてください」

 木之瀬は笑ってごまかすが、俺の耳にはしっかりと「マヌケ」という単語が聞こえた。
 いやマヌケだけど…このやろう。
 無言で一袋押し付ける。

「ちょっといりませんってば」

「俺もいらないから」

「ダメだよ天野、人からもらったものは大切に…」

「お、見本を見せてくれますか。さっすが金久保元部長ぉしびれるぅ」

「え?て、ちょっと…っ」

 ぽかんとした顔をする金久保のベストにボッキーの袋を突っ込み、同じくそこに立ち尽くす木之瀬の胴着の前合わせしてある部分にも一袋差し込む。

「うわっ」

「何するんですか!?」

 驚く二人を無視して、呆れたような疲れたような表情をする宮地の肩を叩く。

「あとはよろしく新部長、お前の手腕が試されるときだ」

「意味がわかりません…」

「大丈夫だお前なら何とかできる」

 そのまま本気で嫌そうな視線を送ってくる三人に手を振り弓道場を後にする。
 大分減った箱の中身に精神的に安堵のため息を吐いた。
 あー、だりぃ。



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