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屋上庭園で騒いでいた天文科二年の野郎三人を見つけた。
七海の首根っこを掴んで逃げようとした土萌の頭にチョップを叩き込むと、俺は今までに自身の身に起こったことを説明し、ボッキーの箱を三人に突き付けた。
「というワケだ食え」
「てぇっおかしいだろ!つか後輩に残飯をすすめんな!」
「哉太、それ言葉の使い方間違えてるよ」
「そもそも食べ物をそんな風に言うこと自体許せないな」
にっこりと微笑む東月の背後にオーラが、黒いオーラが見える気がする。
それに七海と土萌が「ひっ」と情けない声を出した。
「まあ東月、これでも食って落ち着けよ」
「先輩も何を…」
「だいたい歯茎から血なんて格好悪いよ、僕はいらないから」
「美味いぞコレ」
渋る土萌に味の良さを全面にプッシュして袋を渡すと笑みを浮かべて「メルシー」と言った。なんと単純な。
嬉しそうに袋を開けるフランス紳士に七海と東月は「気をつけろ」「油断するな」と警告する。しかしそれを気にせずに、土萌は勢いよく…噛んだ。
バギキッ…ボキ、ゴリ…
「…」
「…」
「…」
「…」
嬉しそうな笑顔が一瞬で掻き消え、土萌の目に涙が浮かぶ。
「羊、大丈夫か…?」
「は…」
「は?」
「ははった…」
上手く舌が使えないほどのダメージらしい。
普段の様子から一変、歯医者を恐れる子供のように震え出した土萌を東月が慰め、七海が必死に元に戻そうと身振り手振りで何かをしだした。
なんとなく悪い気がして、とりあえずベンチの上にあった東月のものらしき鞄の上にボッキーの袋を二つ置いておく。
そしてそっと…逃げた。
許せ。悪いとは思うが俺は自分が一番可愛いんだ。