晴れた夜空を指差した | ナノ


 もしもドラ●もんというどう考えてもだるまが如く丸々とした姿をしながらも猫と称するロボットが目の前に出現したとしても平静を保っていられる自信がある。

「ロケット?」

 そいつが持つ筒のような銃のような、いわゆるロケットランチャーの縮小版もどきに取り付けられたロケットはまっすぐに扉の方、つまり俺に向いている。その今にもすさまじい爆音が聞こえてきそうな様相に少し引いた。

「あり?」

 タレ目長身の後輩(らしき人物)がそう言った瞬間辺りに爆音が響いた。こんな漫画展開ありか?





 鼻の上がやたらヒリヒリする。撫でてみるとさらに痛みが増した、どうやらかすり傷が出来ているらしい。

「おい」

「ぬーん、なぜだぁここもあそこも問題なかったのに」

「無視か」

「ぬぬぬ…やっぱりエンジン部の作りを変えてぬお!」

 ぶつぶつと呟く後輩らしい生徒が前倒しに倒れる。俺がどついたからだ。

「何なのだー!?」

「それこっちが言いたいわ」

「…誰」

 がらりとテンションを変えたそいつに妙な違和感を覚えつつ、俺は仕方ないと頭を振る。

「俺は不知火の友達もどきだよ」

「ぬいぬいはまだ来ていない」

「見りゃわかる、おかげでエライめにあったつーの」

「?何が」

「まあ、それは、いいや」

 悪気がない本人に鼻を擦りむいたことを責めるのも馬鹿らしい。二分前の出来事を記憶から排除すると、未だに頭を傾げている男子(おそらく下級生)の持つロケットを指でつつく。

「これ宇宙艦?飛ぶのか?」

「…まだ、飛んでない。けど次は飛ぶ」

 ふて腐れたような、嫌な顔で返答された。
 どうやらあまり言われたくないようなことを言ってしまったようだ、と思いながら今度はランチャーもどきを見せてもらう。

「へえ、楽しみだな。俺はこーいうの苦手だから、すげぇと思うわマジで」

 こちらはかなり本物に見える様相で、うっかり引き金を引いたが最後ロケット型の危険物が発射されるのではと、内心ひやりとする。

「…すごい?ほんとに?」

「うん?おーほんとほんと」

「ぬーん…何だか嘘くさい」

「悲しくもよく言われる」

 のんびりと答えてランチャーの引き金を引く。完全に壊れているらしく何の反応もなかった。
 とりあえずなぜか静かになった横を見上げたら男子(下級生)が今度はロケットを突き付けてくる。なんだなんだ。

「これをセットしないと反応しないよ」

「マジかそれ。すげぇな高性能じゃん。しかし断る」

「ぐぬ?!なぜだ?!」

「いやさっき爆発したからねこのセット」

「さっきのはちょっと配線をミスっただけだぞ!!」

「いやぁ、配線ミスったって結構オオゴトじゃね?」

「ぬぬ…」

 言い返せない、といったところだろう。ここで言い返されても困るけど。しかしコイツ会話のテンポが面白い。
 ふ、と会話を振ろうとして、名前がわからずに口ごもった。

「えーと、名前」

「翼だぞ、天羽翼」

「おお、なんか今にも飛んでいきそうな名前だな」

「ぬー初めて言われたぞ。そっちは?」

「天野晴夜だよ」

 自己紹介なんて入学して以来だから舌を噛みそうになった。

「なんか…眠そう」

「え?名前が?」

「違う、君が眠そう」

「違う、だるいだけだ」

「ぬー…ん…」

 天羽は何かを考えながら首を捻る。どうでもいいがコイツ本当にデカイな。首が痛い。

「…だらりんちょ」

「はい?」

 凝った首の筋肉をほぐしていると、天羽が何かを呟いたが、ぼんやりとしていてよく聞こえなかったため、思わず聞き返した。

「君、だらだらしてるから『だらりんちょ』で決定ぬーん」

 わあ、わけがわからない。
 自分の顔がすごく間抜けなことになっているのがよくわかる、そのくらいには唐突だった。が。

「まあ、いいや」

 もうどうでも、という意味で。少なくともこの後輩が人の話を聞かないのはよくわかった。
 そして結局、不知火が来るまで生徒会室のど真ん中でアホな会話をし続けた。




晴れた夜空を指差した

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -