短編 | ナノ
イイ場所の話


旅人は旅をしていました。
大きな夢があるわけでも、住んでいた町に嫌気がしたわけでもありません。
けれど旅人は旅をしているのです。

ある日旅人は小さな町に着きました。
町人は旅人を歓迎してくれて旅人が泊まった三日間、町人は旅人に親切にしてくれました。
旅人が出発する日、小さな女の子が言いました。
「この町はイイ町なの、この町よりイイ町はないんだから」
旅人は「そうだね」と言って町から出ていきました。

ある日旅人は小さな村に着きました。
その村の土は乾燥していて地面から生える植物は細て小さく、すぐに倒れてしまいそうなものばかりです。
旅人は宿屋を探しましたがこの村には宿屋がなく、村人は口をそろえて出ていってくれと言いました。
旅人に食べさせる食べ物も水もなかったからです。
しかし村の青年は言いました。
「生きるのは大変だけどこの村はすごくイイ村なんだ、この村以上にイイ村なんてありえないさ」
旅人は「そうですね」と言うとしかたなく村から出ていきました。
お腹が空いてました。

旅人は気がついたら大きなベットに寝ていました。
どうやら行き倒れていたようです。
旅人を助けた街人の街の住人は全員がお金持ちで、恵まれた資源と食材を持っていました。
「この街はイイ街でしょう、この街以上にイイ街は存在しませんよ」
旅人の出発を見送る老人はそう言いました。
旅人は「そうですね」と言うと食料の詰まったリュックを抱えて出発しました。
街からは汚れた水が海へと旅立っていきます。

それから長い月日が流れたある日、旅人は緑がたくさんある町に着きました。
小綺麗な建物の並ぶ町並みは旅人の心を癒してくれます。
ここは旅人の故郷でした。
ですが待ってくれる家族がいるわけでも、愛郷の思いがあるわけでもありません。
だから旅人は住んでいた家の前を気まぐれで通り、宿屋で旅仕度をするとまた旅立ちました。


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