短編 | ナノ
優しい再会
かわいらしい子犬を見つけた。
そこは人通りが多く、あまりにも小さい子犬は今にも踏み潰されそうで見ていられなかった。
その子犬を抱えて駅のほうへと向かうと、子犬は嫌がりだした。
「あそこにいたいの?」
聞くと子犬はきょとんとした表情で見上げてくる。
「無理矢理連れてきてごめんね」
地面に下ろしてやると子犬はどこかへと行ってしまった。
翌日同じ場所に行ったが、もう子犬には会えなかった。
そして数年後、高校生になった私は一人の少年と出会う。
「お久しぶりです」
色黒で黒髪の少年は同じ高校の制服を着ていた。けれど感情のない黒い瞳や、礼儀正しい物腰のせいで高校生という感じがしない。まるで本の世界に存在する執事のようだ。
「会ったことあったっけ?」
「はいあります」
「どこで?」
「6年前に…真冬の商店街、異国堂という骨董店の前です」
私はその店の名前に驚く。
そこは、昔から何度も気にかけていた店だから。
少年は驚く私の表情に、嬉しそうに小さく笑う。
「私は、あの時の犬です」
笑う彼の顔と、あの子犬がダブって見えた気がした。
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